柳宗悦の『民藝とは何か』という本を全国大会(2006)の前日にたまたま読んでいた。最近よく読んでるんだけど、この柳宗悦と言う人、「民藝運動」なる活動をおこなっていた東京帝国大卒の宗教哲学者だ。まぁ有名よね、私は名前しか知らんかったけど。※藝=芸の旧字体 　彼は美術品を観る時、いわゆる高級品よりも庶民的な民器にこそより多くの美が内在すると主張する。私には美術品のことはさーっぱりわからないが、この考え方にはどことなく共感がもてるんです。 　なぜ、高級品よりも民器なのか。有銘の作より無銘の作なのか。この本には以下のように解説されている。

1. 高級品は製作時に製作者の思いが強すぎる
   　より美しいもの、より高度なものを作ろうとするその意思が、美しいものを作るとき邪魔になるという。
   　「(有銘よりも無銘のほうが)より清い境地にあるからです。意識よりも無心がさらに深いものを含むからです。主我の念よりも忘我の方が、より深い基礎となるからです。在銘よりも無銘の方が、より安らかな境地にあるからです。作為よりも必然が、一層厚い美を保障するからです。」
   　武道の世界でも「技は覚えて忘れるもの」と言いますが、あれこれ考えていたら咄嗟の時には対処できない、技は体に染み付いたものでなければ役に立たない。と言うのに似ています。
   　「貴族的な作品にまつわる著しい欠点は装飾の過剰ということです。技巧の不必要なる跳梁です。形態は錯雑となり、色彩は多種になり、全体として軟弱な感じを免れることができません。これも明らかに一種の病状を示した藝に過ぎないのです。そうして工藝品とはいうものの、用途から離れて、ただ見るための品物に傾くのを如何ともすることができません。」
   　
   
2. 技巧の熟達
   　「(民器は)あるものは一日に何百となく作られます。それも分業であるため、同じ形、同じ模様、同じ色への繰り返しなのです。人はこの反復の単調を呪うでしょうが、摂理はこのことに酬いとして技量の完成を与えます。この完成は技巧をすら忘却せしめるのです。人々は何を作り何を書くのかすら忘れて手を動かしています。そこにはもはや技術への躊躇いがなく、意識への患いがないのです。この繰り返しこそは、すべての凡人をして、熟達の域にまで高めしめる力なのです。
   　多く作る者はまた早く作ります。早さにおいていよいよ技巧はへの係わりがなくなってきます。それも不安定な早さではなく、確かな早さなのです。否、確かなる故に早いとも云えるでしょう。」
   

• 「真に用に仕えるものに、悪いものはあり得ないはずです。用が美を生むからです」
• 「美しさのために作った器よりも、用のために作った器の方がさらに美しいと。(中略)上等のものにしろ普通のものにしろ、用のために作らずば美しくはならないと。」
• 「用は生命であるため、用を果す時、器は一層美しくなってきます。」

『なぜ民器が私の心を強く引くか。私は短く「美しいから」とそう答えるより外はないでしょう。「なぜ美しいのか」と反問される方もあるでしょうが、すべて美への認識は直観のことであって、「なぜ」という知的反省から美が認識されるのではないのです。(中略) 直観において観ることとは、思うことよりも先なのです。』柳宗悦

• 直観ですよ、直観。直感じゃなくて。
• あー、念のために言い訳しときますが、別に競技演武とか大会が無駄だって言ってるわけじゃないです。