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蝶のように舞い、蜂のように刺す

 「あんなのは演舞ですよ、演武じゃない!!」的なコメントをよく耳にする。言いたいことはわかる、よーくわかるが。これはひとまず置いていて、演舞てものについて触れてみたい。

 実話だったか物語だったか忘れたが確か前者に、「剣術の果し合いなどであまりにも軽やかに相手を嗜めたので、その様はまさに舞のようであった」、みたいな文章をかつて読んだ。そのような段階があるということだ。
 よい舞は、演者が気持ちいいだけではなく観客も能く魅了する。音や光も巻き込んで演者がその場を支配している。場の支配、これよこれ。武芸の世界にもそのようなものがあると思うんだな。圧倒的な実力差で場を支配する。「蝶のように舞い、蜂のように刺す」て言葉があるようにね、戦っているのに舞っているかのような状態が存在する。 

 つい最近もビスさんと話したのだが、本当に投げた時て気持ちいい!! 投げられる気がない相手をウフッと投げられた時、世界と噛みあった感触がある。打撃にもそれはある。ヌルサクッッと決まった打撃には拳だけではなく全身に響く快感がある。投げも打撃も、力みもなく只自然にそれがあるべきところに収まるように出る時、あるでしょ? 

 こういう世界と噛み合ったような、収まったような感覚、これ対する表現は世間でもよく見られる。坐禅をする姿を「世界と、1枚になる」とか言うことがあるし、インディアン語録でもなんか似たのあるよね。 少林寺でも「天地の間に立つ」とか言う。
 そういえば映画「アメリ」なんて実に分かり良い。神経質な両親のもとで育った女性アメリが、他人を幸せにしようと目覚める映画たけど、冒頭このように始まる。 

「アメリは突然、世界と調和が取れたと感じた。全てが完璧。柔らかな日の光 空気の香り 街のざわめき・・・。人生はなんとシンプルで優しいことだろう。突然、愛の衝動が身体に満ち溢れた。」 


少林寺拳法の演舞 
 んで演武ですよ。少林寺拳法は演武が好き、だと思うけど武道界で演武をしないとこはまず無い。そんな中少林寺拳法の演武てのはどういう在り様なのだろう。 

 拳士は当たり前に思っているだろうが、全く当たり前でないところもある。例えば少林寺拳法は技を掛け合うということでだ。演武で言えば攻守が入れ替わるということね。 
 他所様の演武を思い出して欲しいのだが、弟子が木板を持って立つとか、弟子が次々にかかっていってそれを師がどんどん捌くとかね。基本、日本の武道はそういうノリです。なぜかというと、後進の者がですな、先達に技をかけるなんてのはアウトなわけです。ましてや倒してしまうとかそれが演じるのであってもいただけません。昨今絶対的なものではなくってますけど、かつては秩序をみだすとか言われかねない事柄だった。 
 競技として演武を行う流派では、演者双方を評価する必要があるので最終的には両方掛け合うんだけど、ひとつの演武として互いに掛け合うてのは、少林寺拳法のひとつの特徴ではないかなと思う。異なる二人が一つのものを作っていく、そういう作業なんですな。そして少林寺拳法はこれを発表として用いるのではなく、稽古として用いる、これも大切なポイントです。演武て競技演武だけじゃないよ、てのは大切な考えなんです。 
 んで技を繋げて一構成てのもやや弱いけどひとつ特徴かな。次々状況は変わるわけですな。(a)-(b)-(c) or (ABC) そこには流れがあって同じ(B)でも、(A)からつなぐのか(C)からつなぐのかでは(B)は同じではないんですな。こういうことするから発表でなくて稽古にも使いやすいわけだ。別に開祖は技だけ増やしてよしよしとしたわけではないと思うの。 いろんな創作の余地があると思うんです。


 演武というのは、なるほど「武」を演じているんですな。でも武である限りは対立の世界だとも言える、これはこれで魅せられるけどね。対して舞は調和の世界だと思う。調和とはあくまで、異なるもの同士(自他)が咬み合うことであって、灰色と灰色が混ざることではないから、手順を合わせてピッタリです、ていう予定調和とは違うのです。
 面白いことにこの噛みあった感触てのは、演武より乱捕りのほうがよく起こる。やっぱ合わせようとするのではなく合うものなのだと思う。私が思ってるだけで相手がどう感じているかは全くわからんけどwww  

 少林寺拳法の思想とここでいう演舞は決して遠くないのではないか。だから私はいずれは演舞がしてみたいと思って拳法してるわけだけど、やはりそれは演武の先にあるものだねと日々実感。 
 演武もいい。だけど演舞もええよて言いたいだけです。もしかしたら演武と演舞を分けることがすでにおかしいのかもしれないが、真剣なやり取りに中にそういうものもあってもいいんじゃなかいと思う。


笑顔がステキ

 

キリッとした顔も素敵


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