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〜体力要素による分類〜
スピードトレーニング
  1. 反応スピードを高めるトレーニング
     相手の動きに対して素早くアクションに移るトレーニングですね。神経系の発達が関与しています。トレーニンクでは視覚や聴覚からの刺激にたいして、ということになるでしょう。アクションは突蹴のような拳法関連でもいいし、ジャンプやダッシュでもいいでしょう。集中力も関連してきますのでうまく使えば色々できるかと。基本稽古時に、カウントを不規則な間隔でやるとか、「危ない」といったら素早く前受身しろとか
    (【関連】なぜ乱捕りをするのかの「技術的な理由」)
  2. 反復スピードを高めるトレーニング
     これはリズミカルに動けるか、そしてそのために全身を強調して動かせるか(作動筋の緊張と拮抗筋の弛緩等)ということが大切になります。武道系の練習では反復動作が多いので、うまく使いましょう。
  3. 移動スピードを高めるトレーニング
     ざっくりというと速く走るとかのことですが、速度を高めるには神経系の働きとともに筋力のトレーニングが必要になります。武道系だとチューブトレーニングが代表的かなと。効果があるか疑問視されてますが、重いリストバンドとかもこれかな。

パワートレーニング
 早い動きの中で強い力を発揮するトレーニングですね。パワーを向上するためには1RM(Repetition Maximum)の1/2-1/3の重量をスピードが極端に下がらない回数を、最大努力で反復することが望ましいと考えられている。RMというのは反復可能回数のことで最高何回上げられるかという指標です。5RMといえば、死ぬほど気張っても5回あげるのが限界という意味です。

 左図は「肘屈筋の最大パワーに及ぼす四種類の負荷条件のトレーニング効果」です。図中の%は最大筋力を100%とした場合。パワー増加の効果はどの負荷でも見られますが、30%のときにもっとも効果が大きいことが示唆されています。

 またRMによって、鍛える内容も異なります。寝てる/起きてる筋肉という言葉は不適当かもしれませんが、神経系によるアップはまだ有効に使っていない筋肉を使えるようにします。通常は五割、競技者で七割くらいの筋肉を用いているといわれます。筋肥大はその言葉の通り、筋繊維を太くすることでパワフルにします。
 
反復可能回数(RM) 主な効果
1-3回 最大筋力(神経系の改善)
5-12回 最大筋力(筋肥大)
13-60回 筋持久力
回数を減らしスピードを強調すればパワー
 

 左図は「負荷強度から分類したトレーニングの種類と効果の関係」です。ここで注目したいのは「力の立ち上がり」です。力の立ち上がりとは、強い力を出すときに動かし始めてからどれだけ早く力を出し切れるかということです。体力測定の握力を考えてみてください。握り始めてからしばらくジワ〜と握りますね。あれは立ち上がりが遅いわけです。つまり瞬発力か無いということです。
 武道では、一部の組技を除いて基本的には立ち上がりは早くないと効果が薄くなることは容易に想像できます。


逆に、最大筋力のアップ、筋肉を太くし立派な腕を作るためには七割で12回反復といったトレーニングが最も効果的だということも分かります。それほど大差が無いとも言えるかもしれませんが。
 
 左図は「ウェイトトレーニングがホルモン分泌に及ぼす影響」です。
   Pはトレーニング前
   Mはトレーニング中
   15Mはトレーニング後
です。グラフはトレーニング前の濃度を1として相対値で表されています。そして問題のプロトコルは、
   プロトコル1  5RM 3セット インターバル3分
   プロトコル2  
10RM 3セット インターバル1分

 グラフを見ると、10RMインターバル1分の方がトレーニング効果が高いことが分かります。なおテストステロンは男性ホルモンでアミノ酸から筋肉を作ります。成長ホルモンも筋肉を作ります。特に成長ホルモン濃度の差が顕著なことが分かります。

 このように、セット間の休息時間によってホルモン分泌が異なるため、目的に応じてトレーニングを使い分ける必要があるようです。これは前述のレペティショントレーニングも大きくかかわります。


 次はアスリートのジャンプ能力の違いです。このように、飛ぶという行為においても競技によって選手間に得て不得手があることが分かります。

 これは筋肉にそれぞれの特性があるからで、下の図は下肢を後ろに蹴る時に用いる筋肉について測ったものです。白□・灰
・黒■とそれぞれは一秒間で押せる角度が決まっている負荷です。白は重たくジワ〜としか押せない負荷ですね。下半身の筋肉でも得意な速度があることが分かります。股関節の屈曲は重たいものにじっくりと力をかけることに向いています。対して股関節伸展は早い動きに向いている筋肉特性であることがわかります。

 以上から分かるように競技や筋肉によって特性があります。本来の意味では「使えない筋肉」という表現はおかしいかもしれませんが、スポーツとという観点からすれば使えない筋肉というものがやはりあり、
  • スピードが違う筋肉
  • タイミングが違う筋肉
  • 使わない場所の筋肉
は使えないといえるかもしれません。長距離ランナーなどは使わない筋肉をつけると重たいだけですからね。トップアスリートの世界は熾烈を極めてますから、ほんとに限られた資源を最大限競技に振り分けています。

 我々のようなアマチュアにはここまで追い込み、取捨するまでは頭も意欲も回りませんが、鍛えるべきことにも種類があるのだということは知っておくべきでしょう。武道の世界は、「練習不足」とか一言で片付けてしまう場合がありますが、知識があれば積極的にトレーニングすることも可能ですし、後輩に対して「その姿勢が維持できないのは、鍛えている箇所が違うからではないか」「漫然とトレーニングを繰り返すよりも、より効果の高い稽古があるのではないか」という模索のきっかけを与えることもできるはずです。


筋持久力トレーニング
 筋持久力とは筋肉への酸素の運搬能力、筋肉で酸素を利用する能力、筋肉に蓄えられているエネルギーの量で決定され、筋が連続して強い力を出す能力です。筋肉にからむ毛細血管の量などが関係します。
 これを鍛えるためには、高すぎない負荷の運動を高回数行うことが大切です。またサーキットトレーニングも有効です。毛細血管を考えるならランニングや水泳も有効です。

全身持久力トレーニング
 これはイメージつきやすいとおもいますが。長距離ランナーやサッカー・バスケのように長時間競技に必要な能力ですね。いわゆるスタミナです。呼吸・循環器系が強くないとだめです。インターバルトレーニングも有効です。



 それぞれのトレーニングは別個のものではなく、互いに関連が強いものです。筋持久力と全身持久力のように密なものもありますし、筋力も筋持久力と関係が深い。ですので、どれかひとつだけを鍛えるということにはなりません。


筋力
敏捷性
調整力
スタミナ


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