拳の三要と云うのは、技術を主として学ぶための要諦を云ったものである。拳法にかぎらずすべての技術や芸術を学ぶための要諦は、まずその基本となるものを智次にその組合せ方や用法を学び、最後に自分の英知を活用して千変万化する独自の境地を開発するにある。良師を選んで真諦を極めることが肝要である。
1. 技について
技とは、身体手足を用いてなすところの、一定形の法則的動作のことである。即ち、突方、蹴方、受方、投方等の基本的動作のことであり、祖師以来の先師が演練研究の結果到達した所の最も効果的な原則である。
2. 術について
術と云うのは、その練磨された「技」の活用法である。即ち、修得した技を何時如何なる場合に用いればより大なる効果を修めることが出来るかと云う、有効適切なる技の運用法のことである。
この「術」は、如何にすぐれた指導者と雖も、助言は出来るが「術」そのものを、言葉や筆で伝えることは出来ないものである。所謂。以心伝心、自修自証より他に、会得の法のないものである。
3. 略について
略と云うのは、前二項で説明した技と術を統禦する「智略」のことであり、兵略のことである。技や術のみにては百人千人の敵を制することは出来ないことである。智略あるものは良く単身衆膽を奪い、危地を脱することが出来るものであり、技と術と略を併せ備えたる者は、千万人と雖も良く手を下さずして威服せしめることが出来るとされているのである。
以上三要について大略を述べたが、注意しなければならないことは、初心者が功をあせるのあまり、順序を無視して、基礎となる技を充分に会得せぬままに、術や略を用いようとすることである。
基礎となる正しい技が会得されないうちに、術や略を用いようとすれば、技がくずれてしまい、迷を生じて、いつまで経っても「格」に至ることが出来ないものである。
技を会得すれば、術が自然に理解出来るようになり、技術が会得できれば、略は自然に悟り得られるものである。
【関連・参考】技と術 |