トップ > 豆辞典 > 少林寺拳法資料板 > RUSHER's STRATEGY > 第2章.いかに作るか 〜 「作曲」

Ver.1.00
青字:ぼくゃあなた(問者) / 黒字:RUSHERオヤビン(答者)

困惑理由はいくつかあって、
@相方が演武自体も不慣れであること。
Aしかも私が先々週に2段に昇格しましたので2段の部に初段の相方は出なければなりません。
B相方は受験生ゆえなかなか練習にこれません。
とまぁ相方のせいにしたような形になっていますが、このような環境なのでしかたがないって感じです。相方はやる気はあるようなので練習のしかた次第という感じ。あまり複雑な演武はまず無理です。
  今回構成から考えるのは初めてなのでどのように作ったらいいか迷っています。

 では、まず譜面(法形の組合せ)を作成する方法を案内しましょう。

 一般組演武の制限時間は1分半〜2分です。たいてい、パターン(楽章)を6つ作ってつなげれば、ちょうどいい時間になります。(後々計測してみて制限時間を超過していたら、1つ削ればいいです)
 基本的に、攻者・守者は1パターンごとに交代になります。つまり、あるパターンでやられた(反撃を喰らった)攻者が、次のパターンでは守者となるのが基本形です。

 ある学園の監督が書いていたことですが、6のうち最初と最後のパターンは大技、というのが通例です。大技とは、剛法で入って柔法で投げて固める、という剛柔一体の定番形式だと思えばよいでしょう。特に1番目のパターンは、安定かつ高速なパターンをもってきましょう。安定とは「出だしでつまづくと心理的ショックが大きくて後に響くし、開始前からそのことで頭がいっぱいになってしまうから、自信があるものを持ってくる」という意味です。高速とは「一発目に切れのいいのをやれば、お互いそのあとスムーズに、身体も気分もノってくる」という意味です。
 ここで、自分が数年来、定番として使っている1番目パターンを一つ紹介しましょう。これは初段拳士なら十分できます。昨今ではうちと相方の支部の小学生/中学生の有段者組も採用しています。ちなみに小手投で飛ぶ必要はありません。

 わんわんさんが言うように、最初は人のをコピって構いません。これも使っていいですよ。

 一つの演武は6構成を基本とせよ
 最初と最後は大技で攻めよ.
 特に序盤は,安全で高速な自身のあるものを心がけよ



 さて、以上は一例でしたが、剛柔一体のパターンって、実は次の二点を決めれば半自動的に決まるものです。
 「最初の守者の構えを何にするか」(イントロ)
 「最後の投技を何にするか」(カデンツァ→コーダ)

 最初の守者の構えとは「結手構」「一字構」「待気構」「乱構」「八相構」といったバリエーションを指します。このうち「一字構」はありふれているため、それを見た攻者が演武の最中に「えーと、この一字構で……あれっ、どっちをやるんだったっけ?」と、思い出せなくなってパニックになる事態を招きがちです。ゆえに、一字構からパターンを始めるのを極力少回数とするのが、自分の演武作曲ノウハウの一つです。
 さて、大抵どこの組も以下の剛法法形をパターンのイントロに持ってきてます。好きなものなり、得意なものなりチャレンジしてみたいものなり、適宜ピックアップすればよいでしょう。

 結手構:「払受地二」
 一字構:「下段返」「払受地二」「逆蹴地三」「払受蹴」
 待気構:「中段返」「燕返」「千鳥返」
 乱 構:「半月返」「開身突」
 八相構:「逆転身蹴」

 最後の投技とは、剛柔一体の系統だと初段拳士で使えるのは「小手投」「上受投」だけですから、悩む必要はありませんね。両方とも採用することにして2パターン作ってしまえばよろしい。攻者が連反攻において守者にぐんと接近したならば、守者の手首や衣服を途中で掴むシチュエーションにリアリティが出ますね。その場合は「巻落」「外巻落」「巻小手」「逆小手」「袖巻」「両胸落」も選択肢に加わります。

 というわけで、上記二つのメニューからカフェテリアよろしく選んで組合せ、途中を適当に(ただし、あまりに長いチャンバラは嘘臭いから禁物!)応酬して埋めれば、剛柔一体パターンが3〜4個はできちゃうでしょう。

 剛柔一体のパターンは、次の二点を決めれば決まるもの.
 「最初の守者の構えを何にするか」(イントロ)
 「最後の投技を何にするか」(カデンツァ→コーダ)




 6パターン全部を剛柔一体にする必要はありません。全パターンのコーダを投げにしようとしても初段弐段ではネタも尽きるし、やってて疲れるし(起上がるのがけっこう体力を消耗する)、たぶん見ているほうも飽きます。だから、つくらいは剛法でけりをつけてしまうパターンもあっていいです。

 ただし「けりがつく」剛法でなければなりません。仮に蹴天三とか伏虎地二で終わることにしたとしましょう。それが軽かったなら「あれ? まだ間合い切ってないよな? まだ連反攻を続けられるよな? ……なんだか中途半端だな」という印象を観衆に与えてしまいます。だから、もし蹴天三で終わるなら両者がさっと蜘蛛足退りをして、伏虎地二で終わるなら両者がさっと開退りをするなどして、つまり素早く間合いを切って「続行不能となる状況=残心」を生み出すようにしなければなりません。 あるいは「強い」剛法をコーダとして採用する手法もあります。例えば
・蹴天一や半月返で掬首投して転がしてしまう。
・水月返で押倒して転がしてしまう。
・千鳥返や三日月返で、膝裏を刈足して転がしてしまう。
・振天二の足刀蹴をカウンターで入れて蹴飛ばしてしまう。

といった終わり方にすれば、間合も離れるし、続行不能だと素人目にも分かりますね。弐段拳士なら伏虎地二が使えるから、転がしたあと、これで続けるのも一回くらいあるといいですね。

こういった純粋剛法パターンは、6個中1個くらいあってもよいです。

 一つくらいは剛法でケリをつけてしまうパターンもあっていい.
→ただし,「ケリがつく」剛法でなければならない
 間合いを切って「続行不能となる状況=残心」を生み出すこと.

 この他、純粋柔法パターンを1つは入れましょう。これは、法形をそのままやればよいので、両手押小手でも、逆下段構からの切小手(切返天秤等に変化してよい)でも、最後が剛法で終わる龍王拳第一(小手抜連反攻)でも、何でもよいです。
 一つくらいこういう純粋柔法がイントロになるパターンを入れると、それまでスピーディに進んでいた演武の流れがここで「じらされる」ので、演武に深みが増します。ついでに時間稼ぎもできます。(笑)ただし、先に述べた理由により、これは1番目と最後のパターンにはもってこないほうがよい、と自分は考えます。
 ちなみに自分は飽きっぽいので、この純粋柔法パターンの守者を務めるとき、何の法形をやるかを事前に決めないことにした一時期があります。乱捕っぽくてスリリングでしょ?


前回の全国大会は団体で出ましたので他の支部の演武はいろいろとビデオに残してあるのですが、いざ自分がやる演武となると・・。なかなか。

 そのなかで使えるパターンがあればパクってしまえばよいです。自分も、もう近年はしませんが、三段の頃までは何処でもビデオを撮りまくり、かっこいいパターンを選んではパクってましたよ。
 演武のビデオを見て、使えそうなパターンを、ばしばしメモってみて下さい。紙とペンを持って、道場で相方と試してみて、知恵を絞ってみて、ネタ出しをしあって、試作してみて下さい。



 少林寺拳法には多彩な技があります。それを公に知らしめる演武においては、その多彩さを体現してみせるべきだと自分は考えて作曲しています。
 剛法一辺倒、柔法一辺倒ではいけません。投げたあと固めるにしても、毎回裏返して裏固・閂固では、素人には同じに見えてしまいます。全部の投げ技が右方向に倒れるものばかりというのもいただけません。第一そんなの、やる本人の身体に悪い。うちの出身大学の監督は、抜き技が一つも登場しないのは演武として偏っていると批評なさいます。片方の拳士が延々守者/攻者の片方をやるのは、当然ながら異常です。

 合掌
 

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