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(2002年末・ビスキュイ)


合掌

 ビスキュイと申します。「丸に一廉オフ会」は巨大掲示板群「2ちゃんねる」(通称「2ちゃん」)武道板での書きこみを契機として,少林寺拳法における乱捕り稽古の練習及び研究を目的として開始されたオフ会であります。平成14年2月に第一回が開催され,以後ほぼ月一回のペースで有志が集い,平成14年12月をもって第12回まで開催されました。

 そもそも、現状ではいささか特別視されてしまっている「乱捕り稽古」は,本来は科目表にもキチンと掲載されている少林寺拳法の「正規の」カリキュラムであることを再認識していただく必要があるかと思われます。つまり乱捕り稽古をすることが特別なのではなく,むしろ普段の道院の稽古で行なっていない方が問題であるはずなのです。しかしながら,かなり多くの道院・支部,さらには大学支部においても乱捕り稽古があまり行なわれていないという現実がある中で,いきなり「乱捕り稽古をやれ!」と言っても危険です。望ましい効果が得られるとも思えません。また各道院・支部においてそれぞれ研究するにしても普段の稽古との兼ね合いや時間的制約もありますし,本部(財団法人少林寺拳法連盟)が研究・普及振興している運用法・戦術組成もまだまだ一般の拳士にまで浸透しているとは言いがたい状況です。

 そのような中で「2ちゃん」の武道板においても「少林寺なんざツカエネ〜」「自由組手も試合もやんない少林寺は踊りだろ?」「少林寺やってるけど強くなれないんじゃ?」などの書きこみが溢れていた訳です。またそのような意見に対する拳士の側からの反応も,キチンと論拠をあげて回答している人ばかりではなく「うちでも乱捕り稽古はあまりやっていない」「自分が現役の頃はやっていたが今は…」的な書きこみをされる人がかなり多く,それがさらに掲示板での煽りに拍車をかけるという悪循環に陥っておりました。 (参考資料→2ちゃんねる 抜粋) そこで「このような状況でいいのか?」「本部が動き出すまで何もしないでいるのか?」「納得できないことがあるならまず自分達で動くべきではないのか?」と言う掛け声のもと,「とにかく集まれる拳士達で集まって実際に動いてみて研究してみよう!」ということで始まったのがこのオフ会なわけです。

 当初はあまり評判の芳しくない「2ちゃん」がスタートであるため,「ホントに開催されるのか?」「口先ばかりで体を鍛えたこともないような奴ばっかりでは?」などの意見も出ておりましたが,幸いにも熱心に修練・研究を行なっている各拳士の参坐を得て第一回を無事開催することができ,それ以降も熱心な参坐者や運営に携わるレギュラー陣の協力を得て継続して開催することができました。またレギュラー陣の一人である615期生さんの努力により「丸に一廉」ウェブサイトも開設するに到り,最近では一回の参坐者が20人を突破,ウェブサイトの訪問者数も延べで1万5千人を突破,研究成果についてもサイトに掲載するなど,現在までのところかなり有意義な場を提供できているものと自負しております。


 さて,一般的に「乱捕り稽古」と言った場合「自由に打ち合う事によって反射神経や勘を養う」「打ち合いに慣れて度胸をつける」等の効果を狙って行なうことが多いかと思われます。そしてまた逆にこれらの効果を得ることによって乱捕り稽古の技術も上達するものと考えられていると思います。そしてそのためには「乱捕り稽古を数多く行なわなければならない」と。これについては間違い無く正解であると思います。特に「乱捕り稽古」をあまりしたことのない方については,数多くこなして「自由な攻防に慣れる」ということも重要な事であります。しかし,このことを踏まえた上で,私自身(と恐らく他のメンバーも)がこの「乱捕りオフ会」の研究成果の中で,非常に実感したことは,「乱捕り稽古と基本及び法形とは密接にリンクしている」ということです。えてして熱心に(しかし自己流で)乱捕り稽古をやりこんでいる人の中には,「基本だの法形だのと自由攻防とは全然違う」「いくら法形を一生懸命練習したって乱捕りには関係ない」と言う人がいます。私自身もかつてはそのような考えを持っていた時期があります。また当初の丸廉オフ会もそのような考えと無縁ではなかったでしょう。「乱捕りオフ会」と銘打っているのも乱捕り稽古を「特別にやる場」という意味もあったものと思われます。

 しかし,丸廉で研究を重ねた結果わかってきたことは,「乱捕り稽古は絶対に必要だが,法形演練を正しいやり方で行なえば無理無く自由攻防に進んでいける(法形演練と乱捕り稽古は無理くつながっている。)」「乱捕り稽古での技術を上達させる為には基本技術の向上が不可欠」と言うことです。この認識に伴い,オフ会での修練内容も当初は「準備運動と基礎突きを少しやった後は(休憩は入れつつも)始めから終わりまで乱捕り稽古」というものから,最近では「基本技術や法形とのつながりを理解し,それらの修練を行なったうえで乱捕り稽古につなげる」というような内容に変化してまいりました。実際に「意味」を理解した上での基本や法形の修練は非常に興味深いものがあり,乱捕り稽古になれている(つまりは「対抗的な自由攻防」の好きな)レギュラーメンバーも非常に熱心に取り組んでいる状況です。
 つまり


というサイクルが実感として理解できてきたわけです。
  「日頃の道院(支部・部活)での修練では物足りない」「形ばかりの練習では不安だ」「少林寺拳法はこんなものなのか?」などと考えている拳士の方々には是非一度丸廉オフ会に参坐していただきたいと思っております。今後の修練の為の何がしかの手がかりはお渡しできるのではないかと思います。

 しかし何事も現状で満足してしまってはそれ以上の発展は望めません。ようやく軌道に乗ってきたとは言え、我々の活動もまだまだこれからです。このオフ会を単なる「参坐した個人の修練の場」として終わらせてはなりません。それぞれの参坐者がこのオフ会で得られたことを道院・支部に持ちかえり,それぞれの場所で種を蒔き実を育てまた新しい種を得,いつかどの道院でもごく当たり前に乱捕り稽古が行なわれることを目指して行きたいと思うのです。

 五十余年前に開祖が四国は香川県多度津町にて蒔いた一粒の種,それがめぐりめぐってここでまた新しい芽を生やしました。少林寺拳法がなければ出会わなかったかもしれない同志が法縁によりここに集ったわけです。思えば不思議な縁です。このような縁を思うとき,私は「ダーマ」の働きというものを感じます。この出会いを大切にしながら,これからも良き同志達と共に修行に励んで行きたいと思います。

結手

●乱捕り稽古により
@技術的なもの.自由攻防内での勘・間合いを養う.
A基本稽古へのフィードバック.弱点・不足要素の把握.
B自分ができること、できないことを知る。

  乱捕り稽古といえば@が至極強調されがちですが,Aがあることも改めて理解していただきたいと思います.Aは@よりも軽いルールでも十分に得られるものです.限定要素が多くても,どんなに軽めでもいいので乱捕りは,持続的に行なうべきだと考えます.本部の行なっている「立会い評価法」も弱点の把握という点では,より具体的なものが得られる良い方法ですね.
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