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おれいっしょー

合掌

  少林寺拳法の謳う三徳には,「健康増進」なるものがあります.少林寺拳法はいったい何歳まですることができるのでしょうか? スポーツやある種の格闘技には「現役を退く」と言う言葉がありますが,では少林寺拳法において「現役を退く」とは何時のことなのでしょう?
  オフ会を通して知り合ったある一人の方(S氏)の話をここで紹介してみようと思います.


●S氏が師事した太極拳の先生について in CHINA (S氏のメールから)
  私(S氏)が学び始めた当時既に齢70を越えておいででしたがこの先生にも歯が立たなかった。当時私は少林寺拳法は四段,身長は169cm、体重では74kgほどで打ち合いに関してはちょっと自信があった。そして技法のデテイルに関してもね。最初に訪中した時、「おまえは体がなかなか強そうだから面白い事をしてみよう。ちょっと打ってきなさい。」と言われました。師父は身長は160cmほど、体重は50kgもあったかなぁ?当時北京で流行っていたサングラスもかけていたから、イメージとしてはドラゴンボールの亀仙人が髭を落としたらかくやと言う感じだったよ。
  ほんとに打っていいものか?私の聞き違いかと思っていたら、周りの兄弟子達が「やってみれ!」と言っている。「ホンじゃ・・・」とばかりに打ってみたら気が付けば跳ね返されて後ろに6m程吹っ飛んでいました。にこにこしながら「再来。」(もう一発打ってきなさい)と仰るので今度はちょっと用心して突いたら、今度は左の方に吹っ飛ばされた。実は師父が中国武術界の重鎮だった事を知ったのはこの後の事でした。
  よく北京の街の中も連れて歩いていただいたけど、後からついて行くと何故か追いつけない。私も歩くのは速い方ですが、当時二十歳を少々越えた私がなかなか追いつけなかったのです。ある時大きな水溜りがあって、師父がポンッと飛び越えたので真似して飛び越えようとしたら飛び越えられずに落水してしまった事もあった(ちなみにS氏は高校時代は陸上競技部で短距離走と跳躍をしていた)。後で考えればあれはやはり噂に聞く「軽身功」の効果だったのでしょう。ご本人は「運気」と言っていたけどね。615期生君、こう言う事はあるのですよ。あの世界には・・・・・・


  私は最近武道と健康の関連性を,@りょうさんが行っている操体や,A整法の講習,またはB書籍などを通してその存在をひしひしと実感するようになってきました.東洋の格闘技術では強くなる為に単純な筋力増加だけではなく,上手な体の使い方を求めいかに体をより良い状態に整えるか,整えていくかという考えが常に前面にある気がします.あぁ人体ておもしろい.この整えていく過程は直接健康にも向かっているもののようです.(合理性が際立っている西洋のこれについては,良い悪いを問うのは下らない事でしょう)

  少林寺拳法のある高名なN先生は当時60歳代にして剛柔共に若い者を寄せ付けない動きをしていたという.S氏曰く,
  「ある時講習後にN先生の宿舎に呼ばれて整法を行うよう命じられましたが、ここで驚いた。筋肉の状態、肌の状態などを見るとおよそ60代の人間とは思えない。ついでに言うならばトランクスの柄も!! 首を挿げ替えたらそのまま20台後半から30代前半と言うコンディションでした。なるほど、正しく鍛えているとここまで体を維持できるのだなぁと大いに感心したものです。」

  またS氏が師事する少林寺拳法のM先生は今年72歳であり,「一見すると普通のおじいちゃんなんだけど、練習が始めると全然不自由さを感じさせない動きをする」という。「特に投げる時なんかはいきなり加速する。私はこの先生に二度にわたってムチウチにされ、カイロドクターにかかった事がある。首は細い方じゃないんだけどネー。」だそうだ.ほんまかいな!?と思ってしまうが,複数の人がそのように言っているのを聞いたので悩む日々.
  さらに幾度と合宿を行っている宿のおじぃさんは80歳を超えた現役の剣道八段で,未だに近在の若いの集めては痛めつけているそうな.
  こういった方々を見ていると「あの歳までできるのね」と思って,喜び半分疲れも半分?だったという.


  さらにS氏は言う.
  「昔,N先生を招いた講習会にも何度も参加したけれど、一泊二日の研修で初日はほとんど基本に費やされました.参加してるのは皆有段者だったが,それこそ,立ち方,気合の出し方から始まり,運歩,突き蹴り,体捌きから始めました.運歩と攻撃の練習ではN先生自らミットを持たれ運歩で逃げながら突いたり蹴ったりさせるんだけれどコレがきつい。でもN先生の方は息も乱れず汗もかかない。また、連反攻でも『有段者は少なくとも四連五連はしなさい。』と仰り、『相手が来ないと思っているところを攻撃するのだ。』と仰りながらいきなり三日月蹴りなどをくださる。
  まぁ、特殊な例かも知れないけれど、今の年齢を考えると『しっかりやればまだまだ修行を楽しめるナ。』と思ったものでした。
  こんな実例を見ているから、大学を卒業して2〜3年しか経っていないような拳士が現役の学生達を前に「俺はもうトシだから・・・。」なんぞと言っているのを聞くと片腹痛いを通り越して憤りを感じてしまうネ。」

  少林寺拳法は養行です.大学拳法部を終えて去っていく拳士に一生を通じて取り組める質と量があると信じてほしいし,もっと多くの同志が実感できればよいのに…と日々思います.拳士にとって「現役を退く」とは何時なのか? 体が先か心が先か.最後に私は次のように言われました.
「さぁ、さっさと追いついて追い越して行きたまえ。
でも、そうは簡単にはさせないぞ。」
(2003/5/18,615期生)

【関連・参考】道をつける

※1
  すっごく蛇足で本文とは全く関係ないですが,「追いついて来い」という言葉を聞いて,今思い出したことがあったので,追記させていただきます.
  私の親友の中に,いつも武専の「質疑応答」で派遣された本部職員に「」について聞く人がいます.それでいつも「あの人はすごい,よかった!!」とか「あの人は偽者だ!!(笑)」とか言うのです.話をはぐらかす人もいるんだとっ.
  彼曰く,「先」について質問すると「どっからでもかかってきなさい」と言う人と「じゃぁ,突いてきなさい(蹴らないでネの意)」と言う人がいるらしい.後者の場合はさらにいろいろあり,彼に突かせてくれる人,別に指名した人に突かせる人と別れるらしい.「どうして俺に突かせてくれないのか!!」と彼は(後で)怒り,そして必ずこう付け加えます.「逆小手の達人なんてっ,どこにでもいるぅぅ!!」
  何を言わんとしているのか,察してください.『後輩を侮らず』.見てる人は見てますよ.

※2
  中国では病気の原因を「外邪」と呼ぶ事があります。これには「寒気」「暑気」「湿気」「暴飲暴食」「過淫」「心配事」等、色々な要素が含まれます。広義に「ストレス」と言って良いと思います。しかし、武術を修める人達にとっては「外敵」もこの「外邪」に含まれると言う事です。考え方としては「寒気」だの「暑気」だのと、自らを傷付けまたは殺傷しようとする「人間」はシームレスに続いているのです。「だ・か・ら」武術をするとか・・・。

※3
若者に告ぐ
親方に授けられるべからず
一意専心
親方を乗り越す工風を
切磋琢磨すべし
これ 匠の道の真髄なり
         (プロジェクトXで言っていた言葉 大工)
※4 2ちゃんねる武道板 武道・武芸名言集※心にしみる言葉を http://sports7.2ch.net/test/read.cgi/budou/1097783919/
212 名前:剣客[] 投稿日:05/01/29 23:30:17 ID:Sq0R747W
もうかれこれ1年半前かな?今の会で習い始めてから2回目の練習中に師匠が突然「剣客(俺の事ね)、ちょっとこっちおいで少し休もう」って俺のことを手招きして道場内に置いてあるベンチに腰掛けて、傍でポカリをがぶ飲みする俺(失礼だったな・・・)
に対して、真剣な表情で「剣客、辞めるんじゃないよ、いいね!」と・・・・
で、続けて・・・「これは死ぬまで続けるものだからね、中国の武術家は練習をやめた人間に対しては過去にどれだけ凄かったとしても、武術を辞めた人間に対してはもう評価などしないんだよ。段を持っているとかいないとかそういうことではなく、最も大切なのは死ぬまで練習を続けることなんだよ。だから、辞めるんじゃないよ。いいね。」 って釘を刺されたよ・・・で、それからまた練習に戻ったんですけど、正直、こりゃあ、とんでもない道に入ったなって思いました。
それまでは、そういう自覚はなかったんでね・・・・考えさせられたな〜俺の師匠は他にも正しい武術の練習方法や、なぜ武術を学ぶのかといった意義や、武術家の「悟り」などに対して非常に深い発言をしていますので、もしよければそういったことも書き込んで生きたいと思っております。では、明日も練習ですのでもう寝ます。 失礼します〜

※5
 上に、6m跳ばされたみたいな話があるけど、ほんまかいなて思ってたけど、僕も送小手で5m位ぶん投げられたことある。その時わかったよ。居るんだよな本当にこんな人が、武術界には。


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