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2005年11月25日
はじめに
現在、当社と少林寺拳法グループはマスター・ライセンスに関して係争に発展しておりますが、本記述は現在の係争に至るまで弊社がどのように関わってきたかを代表者として私述をもって残したいと考えております。ご質問等遠慮なくコメントをいただければ幸いです。時間のある限りご回答をさせていただきます。
(2005/11/29 午後くらい)現在、当社と少林寺拳法グループは道衣・帯・法衣のマスター・ライセンスに関して係争に発展しておりますが、
サイナップス社 代表取締役 仁科 浩明
2002年某月某日 本社 神宮前事務所にて
応接室のドアを開けると凛とした女性が秘書を同席して座っていた。私は一目でこの人が総裁なのだとわかった。名刺を交換して当社の事業概要を説明し、その日から正式に少林寺グループとの関わりが始まった。
まだ、その時の私はこのグループが巨大な組織だということを知る由もない。
当社はIT企業である。ただし、今、世間で騒がれているタイプと違いオリジナルソフトウェアを自社にて開発し、そのソリューションをサービスまで一環提供するメーカー色の強いソフトウェア会社である。少林寺拳法グループのIT化と当社のソフトウェアの提供についての協議が始まった。
私にとっての少林寺拳法は、その時点ではひとつのクライアントとしての位置づけであった。しかしクライアントを理解するためには、その理念を理解することから始めなければならない。私は、その日から少林寺拳法の調査・研究を自分自身で行いはじめた。
“半ばは自己の幸せを、半ばは他人の幸せを”をはじめとする開祖 宗 道臣の残した語録を読み、私はこの調査に没頭した。
なぜか? 開祖の言葉に感銘を受けたからである。開祖が残したひとつひとつの言葉には本質がある。だから心にダイレクト伝わるのである。
この思想には混沌とした時代を徘徊する現代の人々にリーダシップを発揮させる力があると強く感じました。
子供たちが学校・社会・家庭でバランスの悪い教育を受けざるをえない今日、多元的な社会構造の中でもっとも必要な“生きる力”の基本を身につけるプログラムと理解した。
このような背景から私は少林寺拳法グループが持つ潜在かつ顕在的な力を有効に活用していくことを念頭において関わることにいたしました。
太陽が差し込むような熱い日、私は香川県多度津の少林寺拳法の本部にいた。
本山の門の前で最初に出迎えてくれた若い拳士の方の心地よい対応に好印象を持った。続いてすれ違う子供たちや中学生の拳士たちの両手を合わせての挨拶“合掌礼”もしっかりしていたなぁ。と感心したのを記憶している。
挨拶というコミュニケーションの基本がこのグループの理念が行き届いていることを確認するには十分だった。
この訪問が最初の訪問であることはいうまでもない。しかし拳士とは違う実務部隊について、巨大なグループの本部なのに職員があまりにも少ないのに違和感を覚えたのである。
私は、おおよそビジネスとはだいぶ距離あるグループだということを直感した。
当社はこのあと約3年間に渡り、ITのみならずライセンスビジネスの構築に関する提案ならびにビジネスコンサルテーションを提供することになる。
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2005年11月28日
少林寺拳法の事業基盤と分析 第1章その1
少林寺グループは60周年を数年後に控え、さらに今後の300年を見据えたとき、「宗教・財団・学校」の3法人の機能では不十分なことを感じていた。総裁をはじめとする指導部は、グループの更なる発展に付加する機能を模索していた。今後、世界規模での急激な変化が予想される中、少林寺拳法の継承を考えたとき、何が必要でどのように計画・実行するかを常に検討するのは当然である。そしてグループは更なる機能を持つ実行部隊が必要になるだろうとこの時点で考えていた。
当社が企業をコンサルする際には、その企業内の情報流通等を基本として分析をはじめる。まず意志決定までの流れを分析し、その執行の鍵となる責任者を選別する。しかしながら少林寺拳法グループは新規事業やビジネスを実行するための組織と意思決定をする仕組みがないことを痛感するのである。
宗教法人と財団法人ならびに学校法人からなる少林寺拳法グループはそもそも営利追求するための組織構成ではない。組織運営を実行するための原資は
1.信徒香資費(お布施)
2.会費(教費など)という二つの極めてシンプルなモデルであった。そのため今まではビジネスを意識する必要がなかったのかもしれない。
しかしながら、日本国内だけでもすでに実働15万人会員(と聞いている)その数は企業の視点からみたとき驚愕に値する数字である。
少林寺拳法を、開祖の思想を受け継ぎ今日まで世界33カ国にまでその思想を広め、支えてきた道院長をはじめとする指導者の方々の並々ならぬご努力の成果であることはいうまでもない。
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2005年11月28日(公開は12/01午後)
少林寺拳法の事業基盤と分析 第1章その2
私にとって更なる驚きであったのは、そのグループの礎を形成している道院長ならびに指導者の方々に本職が別にあり、指導と普及に対して指導報酬等を受けてとっていないとのことだった。私はこの指導者たちの熱い思いとその精神に強く心を打たれた。
次の世代が同じ環境下で道院を開くのが難しい時代になっていることはご想像のとおりであろう。少林寺拳法の精神を生かし普及させていくには、時代の変化を捉えながら次なる仕組みの創出を計ることは必然である。
グループ運営の基本収入は何であるか?
先に述べたとおり、会員からのお布施と教費である。
では少林寺拳法グループが会員(拳士)に提供しているものは何か?
1.
教義(精神)
2. 武道としての少林寺拳法(技法)
3.
無形財産・ノウハウを活用してのサービスの提供(指導・修得システム)
この3つとすでに少林寺拳法が保有する指導者と会員が世界に広げてきた知的財産である少林寺拳法マークがある。(この時点では統一マークが制定されていない。記述の時間軸を気にとめていただきたい)
その多くの財産・資産の運用と管理が適正に行われず、その価値は内部と一部の業者で利用されるだけで、その真の価値を理解していないというのが次の分析のひとつだった。
この会員(拳士)組織が重要基盤であることは間違えのないことで、まずは拳士やその家族までを鑑みた中長期的なビジネス戦略の提案をしていくことに決めたのである。あくまでも組織力を十二分に活用し、会員に還元していくことを基本方針としたのである。
もちろん開祖の思想を念頭においた上での提案であることはいうまでもない。
これまでのように述べると商業主義に走ると思われる方々もいらっしゃるとことと推察しますが、今後300年を見据える少林寺グループだからからこそ、次なる戦略が必要であり、このすばらしい思想と教義の継続・継承ならびに普及させる為には、さらなる資本の充実とその有効的活用が必然である。すくなくとも少林寺拳法のもつ潜在的な力を用いた事業は一部上場企業に匹敵するような事業構築が実現可能であると考えた。
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2005年12月08日
少林寺拳法の事業基盤と分析 その3
先にも述べた通り、当社はソフトウェア開発のみならずアナログも含めたサービスまでをトータルで提供することを事業コンセプトとしている。
IT企業が道衣販売などの事業に手をつけることに対しては疑問視する声があることは私も知っている。
しかし、当社では、ITをクライアントにとってもっとも有効な形で提供するには、単にソフトウェアを販売するだけでは不十分で、総合的な提案・サポートが必要不可欠であるとの信念を持っており、この立場は設立以来一貫しているのである。つまり、クライアントが有するビジネスチャンスをフルに活用し、最大限の利益の創出を支援することを『コンサルティング』ととらえ、IT企業としての当社の利益にも繋がっていくと考えているのである。
少林寺拳法グループについても、組織及び個々の拳士に可能な限りの特典をもたらし、さらには同グループの存在をアピールすることによって入会希望者の増加に結びつけるべく、一つのビジネス基盤として見てみることにした。
ただし、もちろん当社は少林寺拳法の精神をビジネスに変換してしまおうとするものではなく、あくまでもビジネス的側面をサポートするのである。
少林寺拳法グループの運営をビジネス面から見て、改善が可能なものとして一つの例を挙げるなら、新人拳士等に販売するビデオ・DVDがある。
現在、ビデオ・DVDの制作は自己資金(つまり拳士から集めたお金)で行われているにも関わらず、拳士への販売の際には代価を徴収している。
しかしこれをスポーツ関連など、さまざまな企業から広告をとることによって、制作費自体を相殺できるばかりか、利益を上げることさえ可能になるのである。
ビデオ・DVDの利益は道院の運営等に充てることができ、無料のビデオ・DVDを外部に配布すれば、より多くの人に少林寺拳法の魅力を知ってもらうことも容易になるのである。
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2005年12月12日
少林寺拳法の事業基盤と分析 その4
大会の運営についても、同様のことがいえる。
各地区の競技大会のWEB中継、大会の模様のビデオ・DVD化は、拳士人口を増やすための有効な手段となるであろう。もちろん、現在、各出場拳士からの参加費で賄っている大会運営費も、スポンサーを募り拳士の負担を軽減する方策を探るべきである。
賛否はあるかと思われるが、成績優秀者に賞品・賞金を授与し、修行へのモチベーション向上を図ることもできる。
かつてはアマチュア主義を貫いていたオリンピックが、企業の資本を活用することによってさらなる発展を遂げたように、少林寺拳法の未来を展望するとき、このようなビジネス的な視点を持つことはきわめて健全なことと当社は考えるのである。
少林寺拳法グループの会員組織をビジネス基盤と捉えると、創出できる年商は500億円規模になると当社は試算している。
少林寺拳法グループの収入は、財団法人だけでも年間10億円近くに上る。グループの年間収入を仮に30億円とした場合、ファンド運用しただけでも年間1億円の利益を容易に上げられる。
グループの資金を、拳士の生活サポートに活用することも可能だ。
たとえば、拳士が不幸にして事故の被害等に見舞われたときに保険金が支払われる「少林寺拳法損害保険」などがあれば、グループ・拳士双方にとって有益な制度となるであろう。もちろん、金融商品をつくるには行政の許認可が必要であるが、昨今の規制緩和により、大きな可能性を持って事業立案することができるのである。
拳士が会費を収め、グループが徴収するだけの静的なシステムから、「少林寺拳法教育ローン」、「少林寺拳法留学ローン」、「少林寺拳法奨学金制度」等といったさまざまな助成制度を独自に設け循環経済化することにより、少林寺拳法はよりダイナミックで生活に根ざした武道になるはずだ。これはまさに開祖の言われるフェアな「助け合い」の精神ではないだろうか。
このように、少林寺拳法グループに限りない可能性を見出し、当社はそのサポートに乗り出したのである。
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2005年12月13日
おしらせ
ご質問・ご意見等のコメントに関しましては、できる限りご回答させていただくよう努めておりますが、時間・労力の都合上、ご期待に添えない場合もありますので、ご理解願います。
ご質問への回答が、既に投稿済みの記事内に含まれている場合もあります。ご質問の際は、事前に当ブログの全文をお読みいただくようお願いいたします。
また双方にとって非建設的なコメントに関しましては、誠に勝手ながら削除させていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。
ご購入いただいた道衣等の品質などについてご不明な点がある方は、ご迷惑をおかけしますが、いま一度当社代理店までご連絡ください。
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2005年12月24日
世界統一マーク制定とマスターライセンサー その1
このブログをお読みの方のなかには、係争についての記述をお待ちの方が多いと思います。事実を正確にお伝えするため順を追って説明を進めて来ていますが、皆さまのご要望にもできるだけお応えしたいと考え、ここで世界統一マーク制定の経緯について述べることにします。
時間軸は大きく動く。2004年10月、当社は少林寺拳法知財保護中間法人(以下、知財法人)とコンサル契約をしていた。当時のミッションは、道衣・帯・法衣の販売形態を見直し、マーチャンダイジングに関連するビジネスモデルを立案・構築することであったが、なかでもいちばん優先順位が高かったのはマスターライセンシー候補を見つけることだった。この時点では、コンサル契約をしている当社がマスターライセンシーを取得する考えなどまったくなかったのである。
さて、マスターライセンシーを付与するには、どのような企業がふさわしいのであろうか?常識的に考えるなら、世界中の拳士の道衣を扱うマスターライセンシー事業は、一部上場規模の商事会社ならびに服飾メーカーが手がけるのが順当と思われるスケールであった。
まずは、現状把握である。日本の拳士OBならびに実働会員、世界各国の実働会員の実数を把握するため、知財法人が中心となって多度津本部と連携をとりながら調査を進めていった。これによって、日本の実働会員が15万人、世界各国の実働会員が5万人、拳士OBを含めると150万人、という数字を得た。
そして、同時に開始したのが、当時の拳士が実際に使用している道衣の調査である。公式の道衣が正しく使われているかどうか、オザキ社の協力のもと抜き打ちチェックを実施した結果は、驚くべきものであった。
すぐに浮かびあがったのは、非公式道衣の実態だ。本部の承認を受けていない商品が、大量に流通していることが判明した。
また当時の少林寺拳法グループのライセンス管理の構造上、7社ある販売代理店のなかには、マークのタグを偽造している疑いの強い企業があることもわかった。当然、適正なロイヤルティも収めていないであろう。
当時、少林寺拳法グループに支払われた年間ロイヤルティ費用はグッズなどを合わせても1千万円前後であったと記憶している。少林寺拳法グループの側からすると、入って来るべき収入が入っていなかったことになる。
(ちなみに、2005年4月に当社がマスターライセンスを取得してからは、5千万円を超えるロイヤルティを、現在に至るまでに支払っている。)
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2005年12月26日
世界統一マーク制定とマスターライセンサー その2
当社は、マスターライセンシーとなる大手商事会社・メーカーの選定を進めることを躊躇した。改革が必要であることは承知していたものの、想像した以上に問題が深刻だと痛感したのである。
道衣・帯・法衣の生産と販売をオープンなものにして新事業を展開するには、関連企業や会員の協力体制が不可欠である。世界規模でライセンスを展開していくには、拳士の認識も世界規模でひとつにすることが必要なのであり、これがなければどんな大企業がマスターライセンシーになってもいい結果は望めない。事と次第によっては、ライセンス管理の不備を理由に、知財法人を相手にライセンシー企業が損害賠償訴訟を起こすような事態にも発展しかねないのである。
これは当社が解決できる問題ではない。少林寺拳法を時代の変化に対応したオープンな武道にするに当たり、当社はビジネスとしてそのサポートを行ってはいるが、当事者はあくまでも開祖の教えに従って修行に取り組んでいる拳士の皆さんである。とりわけ、本部及び少林寺拳法を支え普及させてきた道院のリーダーシップは、なににもまして重要な推進力である。変革の第一歩となるであろう道衣・帯・法衣管理の明瞭化も、本部及び道院長の方々に現状を把握していただき、新たなライセンス構造を理解していただくことで、はじめて実行できることだ。
当時の知財法人に目を向けてみると、部門調整や法務に関連する煩雑な業務を、総裁ならびにライセンスビジネスには不慣れな女性職員が一人で担当していた。
当社も、これだけの大きな事業化を行う以上、早々に人員の増強が図られるものと当然のように考えていた。
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2006年01月18日
世界統一マーク制定とマスターライセンサーその3
少林寺拳法グループが、ライセンスビジネスへの本格的な取り組みに向けて、人員等の体勢を増強することはなかった。
しかし、事は既に動き始めてしまっていたのである。
いくつかの企業は本事業に大変な興味を抱き、本格的な検討に入るところであった。しかし、統一マークの制定について、グループ全体のコンセンサスを得るのはまだこれからである。
内外の道院、拳士の方々は、この件をどう見ていたのであろうか。
一つ、例を挙げよう。
インドネシアは、わが国に継いで少林寺拳法人口の高い国である。VIPたちに日本留学の経験がある人が多く、日本滞在の際に彼らが少林寺拳法を学び、本国に帰って広めたからである。同国では、少林寺拳法が国技といってもいいほどの地位を得ていると知ったときは、私も驚きもしたし、また日本で生まれた少林寺拳法が国境を越えて愛されていることに率直に畏敬の念を持った。
ただ、愛されているが故に、インドネシアの少林寺拳法には独自のスタイルが形成されているのであった。それを変えてまで統一マークを受け入れることには、明らかに強い抵抗を示していた。
このような問題を抱えた状態で事業を進めてしまうと、後でトラブルになることは必至である。マスターライセンサーとして、ライセンス事業のプロフェッショナルたちにどう説明すればいいのだろうか?
解決を急ぐべく、知財法人と当社は打ち合わせを進めていた。
しかし、事態は思わぬ展開を見せる。
総裁が、統一マーク制定とそれに伴う新道衣・帯の販売を2005年4月から実施すると名言し、道院・支部の拳士の方々に発表したのである。
時は既に10月。冬の足音がヒシヒシと迫っている。
大手企業がこのような事業に参入する場合、ライセンス管理調査(世界商標登録調査とその実態調査)だけでも2ヶ月から3ヶ月を要するのが通例である。
翌年4月のスタートには、到底間に合わない。
にもかかわらず、少林寺拳法グループからは当社に強いプレッシャーがかけられる。公表した以上は実行しなければならないというわけである。
マスターライセンシーとなる企業が決まらなくても事業は進めなければならないとなると、残された方法は一つしかない。
自分でやることである。
2004年11月、当社は自ら世界領域のマスターライセンサシーになることを知財法人に初めて提案した。
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2006年01月20日
世界統一マーク制定とマスターライセンサーその4
コンサルティングの会社がマスターライセンス事業に乗り出すことについては、少林寺拳法グループ上層部でも物議があった。
しかし、待っている時間はない。
まだ承認を受けていない状態で、当社は道衣の試作品の製作を始めた。
というのも、新道衣に使われるハンプ(生地)は一から作り替えることになっているため、開発には最低でも3ヶ月はかかる。2005年4月に間に合わせなければとの責任感からの見切り発車であったが、これは知財法人を含めこの件に関わる者たちすべての共通認識でもあり、試作品製作の作業は、元製作・販売会社の協力を得て知財法人と共同で行った。
したがって、2004年12月27日に全世界領域の道衣・帯・法衣のマスターライセンシー承認を当社が受け、契約にこぎ着けたときには、試作品はある程度形ができてきた状態であった。
テストは、発注先の企業だけでなく、多度津の本部でも数回にわたって行われた。品質についての最終的な承認権限はあくまでも知財法人が有しているからというだけでなく、4月のスタートに向けて、知財法人も、期せずしてマスターライセンシーとなった当社も、連携を密にして懸命に努力していたのである。
さて、ここで時間は2005年4月に飛ぶ(順を追って記述していく予定で書き始めたのですが、皆さまのご希望に応えたいのと、「これを早く言っておきたい」と思うことが次々と出て来たりもして、計画通りにはいきませんが、どうかご容赦ください)。
統一マーク施行され数週間となったある日、私は総裁とともにインドネシアに飛んだ。同行するのは、知財法人の顧問弁護士と職員、そして当社社員である。
当社は、マスターライセンシーとして、欧州・米国・アジアへの説明について知財法人と話し合いを重ねていた。当社はすべてのエリアに説明の必要があると認識をしていたが、第一にインドネシアの名を挙げたのは知財法人の意向であった。
マスターライセンスの仕組みを説明し承認を求めるため、私たちはインドネシア連盟幹部と接見した。
インドネシア連盟に総裁・顧問弁護士・サイナップス社 仁科他2名にて面会した内容の詳細は次回記述することをお約束いたします。
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2006年01月26日
インドネシア会議 その1
2005年4月19日、私は当社の社員とともにジャカルタ日航ホテルにチェックインした。
ジャカルタ滞在は初めてであったが、蒸し暑い東南アジア特有の街のにおいが鼻腔を刺激した。
空港のイミグレーションを出る際には、早くも特有の“攻撃”を受けた。
ポーターが、荷物カートを3メートル押しただけでチップよこせと言う。
もちろん、支払うよしもない。
翌日、総裁、担当社員、顧問弁護士に、私と社員の5名によるランチミーティングで、事前の打合せをおこなった。
ジャカルタに来た当社の目的は二つである。
インドネシア連盟幹部に対して、少林寺拳法本部から、当社が世界領域の道衣・帯・法衣に関するマスターライセンシー(販売権・生産権)となったことを紹介してもらうこと。
加えて、インドネシアエリアへのサブライセンス(生産・販売)を受けてもらうためのプレゼンテーションである。プレゼンテーションの内容は、ライセンスの構造説明とサブライセンスを受けたときのビジネスモデルの概要説明となる。
しかし、ことはそう簡単ではない。
知財法人から前もって概要を説明してもらったところでは、少林寺拳法インドネシア連盟は独自のマーク(鳥のキャラクター)を設定し、これを付けた道衣・帯だけでなく、バッグやTシャツなどのマーチャンダイジングも展開している。
本部は無許可である。
“困ったものだ”というぼやきが、知財法人でも聞かれた。
東南アジアのこのエリアは、周知のとおり知的財産に関する認識がもともと低い。
かといって、10万人とも15万人ともいわれるこの市場を抜きにしては、世界領域のマスターライセンスビジネスは成立しない。経済バランスが日本や欧米諸国とは大きく異なることも考慮して、当社は、サブライセンスを提案する商品を、販売予定していた海外モデル(廉価版)と決めていた。
しかし巨大な会員組織を有しているインドネシア連盟は強い発言力を持っている。
少林寺拳法を国技にまで押し上げた功績のある元日本留学生の同国VIPたちは、インドネシア国内における少林寺拳法について大きな誇りと自負を持っていた。
後の記述でふれるが、私たちが会見した方々は、どなたも髪がだいぶ白くなった年代に達してなおも一国を担う眼光の鋭さを持っていた。
そして、総裁に会うなり、私にとっても既に見慣れたものになった合掌による挨拶が自然に行われていることに、少林寺拳法の世界的パワーを知らされた。
本事業で最初に訪問した外国であっただけに、その印象は強烈であった。
会議は日航ホテルの会議室にて午後より開催された。
先方は5名。いずれもインドネシア国家を代表する方々であった。
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2006年02月01日
インドネシア会議 その2
会議はまず、総裁から当社の紹介があり、次に統一マークのことについて説明がなされた。
先方の言い分はこうだ。
「連盟を脱退するつもりはないし、足並みはそろえていきたい。しかしながら、マークについてはスポーツ省に相当する国管轄の理事会で決定したので、統一マークへの変更はできない」
インドネシア連盟が使用するというマークは、統一マークに似ているといえば似ていなくもないデザインである。しかし、色が微妙に違っており、ソーエンの絵柄の下のロゴが、“Shorinji
Kempo”でなく“Kempo”とだけ記されている。
何でもインドネシアでは、少林寺拳法は“Kempo”の呼称で通っているためらしい。
もっとも考えてみれば、開祖の思想に胸うたれた指導者たちが、半ばボランティアにて外国で普及させたインドネシア少林寺拳法である。
相手の視線からみれば、「そのぐらいはいいではないか」という気持ちもわからなくはないと私自身は思った。
いずれも政府高官などの地位にある連盟幹部たちは、眼光鋭く自信に満ちた口調である。
しかし、それでは当社としては困るどころの騒ぎではない。
海外拳士の75%近くを占める同国が統一マーク(ライセンス構造)をコンプライアンス(協力・了承)できないのは、本ビジネスの根幹を揺るがすことだからだ。
総裁としても、世界統一マークと謳っている以上、無許可マークを容認できるわけがない。
こうして当社を伴ってジャカルタにまで来たからには、本部からある程度の根回しができているものと私は考えていた。難色を示しながらも、最終的にはインドネシア連盟も同意するに至るのであろう。そのように環境を整備するのが、マスターライセンサーとしての当然の責務である。
にもかかわらず、先方はあくまでも「理事会での決定」を楯にとり、仮に統一マークを受け入れるにしても向こう2年間は無理だという。マスターライセンシーを取得し、その上で訪問している当社としては驚きであった。
その後、当社よりサブライセンシーの構造を説明した。構造自体は理解をいただいたが、サブライセンスの受け皿になるような企業の調査などに6ヶ月間くらいの時間がほしいとのことだった。
統一マークの施行については、なおも議論がなされたが、平行線状態が続いた。
会議は決裂するかに思われた。
しかし、私の驚きは、それだけでは終わらなかった。
同意に至ったのである。
ただし、本件については半ば封印するような結論であった。
その内容は以下のようなものである。
・インドネシア連盟は、統一マークもインドネシア勝手仕様のマークも使用しない
・インドネシア国内では、次の理事会の決議まで旧来の卍を使用する
・世界大会等では統一マークのワッペン等で対応する
総裁は、統一マークの使用を最後まで主張し通すことがなかった。
グループのリーダーとしての責務もマスターライセンサーとしての責務も放棄したと言われても、反論はできないだろう。
そしてこの瞬間、当社はインドネシアエリアでのスタートアップ時における商機を失った。
頼みの綱ともいうべきは、サブライセンスの受け皿企業について調査するという先方の言葉であった。しかし、結果が出たら知財法人経由で入るはずであった報告は、6ヶ月が経過しても一切なかった。
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2006年02月02日
訂正とお詫び
総裁と当社がインドネシアを訪れ連盟幹部と会談したいわゆる「インドネシア会議」の日程に誤りがありました。
これまでは2005年2月と記述しておりましたのは当初会議が予定されていた日程であり、知財法人の都合で二度ほど延期され、実際には4月19日〜21日の訪問でした。
確認を怠りましたことをお詫びいたしますとともに、ブログ本文を訂正させていただきます。
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2006年02月04日
道衣等の不良返品交換率について(2005年4月〜9月)
道衣等の不良返品交換率についてお知らせします
@レギュラーモデル総売上22241着のうち当社で返品交換をしたのは20着→0.08%
Aデラックスモデルは824着のうち当社で返品を受けたのは38着→4.61%
(デラックスモデルにつきましては、統一マークの位置についての修正です。マーク位置は協議して決定したものですが、これに対するクレームです)
B総合計は26253着中58着です→0.22%
このほかにお電話、ファックスにてのお叱りをお受けしております。
少ない数字だからいいと考えていたわけではございません。
ご迷惑をおかけしたみなさまには深くお詫びいたします。
当社は、この状況を改善すべく9月からは出荷時に日本企業による全品検品を開始しました。その結果、返品、クレームは著しく減少いたしました。
販売代理店ならびに本部へのクレーム件数及び詳細は、問い合わせておりましたが回答をいただいていないため把握しておりません。したがって、上記の数値には含まれておりませんことを念のため申し添えます。
不良品・クレームの原因としては、検品体制の不備、マーク位置決定の際のミス等多岐にわたっており、当然、マスターライセンシーである当社にもその一端はございます。ただ、原因の100%が当社にあるとするのは事実に反しますし、到底受け入れるわけにはいきません。
また、本共同事業が始まる当初、どのような事業体でも新事業にはリスク、トライアンドエラーは必ず発生するものと両者ならびに販売代理店共通の認識はあり、相互協力のもとそれぞれの役割を十二分に発揮し対処していく構えでありました。問題点の解決について、当社がマスターライセンシーとして積極的に取り組んでおりました点につきましても重ねて申し添えさせていただきます。
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2006年02月11日
道衣・帯の開発と販売開始にあたって その1
これまで、道衣は各社が独自の生地で製造していたため、決まった生地というものがなかった。当社も、道衣の生産を始めるに当たって、生地の開発から着手した。一から織ってテストを重ねなければならないため、2004年11月、大急ぎのスタートとなった。
生地が出来上がると、オザキ社の協力のもと、同社のパターン(型紙)をベースにして試作品をつくった。試作品も、一つのタイプが出来るごとに本部でテストされた。
生地の収縮をコントロールする定着薬品等は日本から中国工場に持ち込み、工員たちに指導を行った。
工場というと機械が主役のように思われがちだが、製品ごとに異なる縫製や裁断などの製造手順に工員が習熟していくには、時間を要するものである。それが、イコール製品の品質の安定となる。
当社が発注している生産業者は、中国の工員を指導するほどに、日本製の道衣がそれはそれは長い年月をかけて培われた職人芸による縫製であったと改めて感じたという。特に、道衣の又の部分の縫製や裁断は、熟練した工員にのみ可能な技であって、指導する側もされる側も苦労の連続だった。
生産業者が中国工場と日本をバタバタと行き来する回数が増えたが、販売開始の4月が近づくと、ようやく努力も実を結び始めたようだ。
商品の改善とテストを行う一方で、当社は欧州をカバーするための英国法人と、北米をカバーする米国法人の立ち上げを急いだ。総裁も、海外のことにはいちばん神経を使っているようだった。
しかしながら、各国を取りまとめる担当の先生方は、4月初旬の段階で、まだ本事業について本部から詳細を知らされていなかった。この件については、書面による通達が主体だったらしいのだ。事業の構造についての説明は、表敬訪問した当社の社員から聞くことになるのだが、なかには「都合がつかない」との理由で訪問を断られた先生もいる。そういう人は、ライセンス事業についてどれだけのことをご存じだったのだろうか。いずれにせよ、多くの方が、当社が多額のライセンス費用を支払っていること、各道院・支部での道衣販売にインセンティブ(運営サポート費用)を支払う予定があることなどの情報は、一切持っておられなかった。
先にも記述したが、当社は3月の段階にて欧州、北米の説明会を知財法人に提案していた。それがインドネシア優先ということで、後回しになっていた。
今まさに道衣の販売を開始しようというときになって、海外の道院・支部の状況が日本とかなり異なることを、当社は徐々に知らされることになる。
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2006年02月13日
道衣・帯の開発と販売開始にあたって その2
まず、海外では道衣が日本に比べてかなり安価で売られていた。
指定業者等がないのに加えて、道場が業者から卸値で仕入れて門下生に販売しているからである。というのも、日本とは違い、一種のフランチャイズのような方式での道場経営が認められているというのである。
驚くのはまだ早かった。
イタリアは、欧州圏でも多くの拳士がいる国だ。当然、当社は現地で説明する許可を求めた。しかし、その要求は知財法人から拒否されるのである。
全世界領域のマスターライセンシーがこのような規制を受けることは、ビジネスの常識では考えられないことだった。
イタリア連盟にライセンス事業の説明がされていないか、あるいはインドネシアのように拒否しているのであろうか? 実は、イタリアの少林寺拳法グループは早くから分裂しており、正式な団体を絞り切れていないのであった。後になってわかったことである。
オーストラリアにも、これまた別の問題があった。
同国は拳士数こそ少ないが、非常に親日的な国である。大学等での日本語教育に熱心で、日本の武道の習得に対しても積極的である。その代わりに、当社の社員が実地調査に出向いたところでは、少林寺拳法とおなじ道場でおなじ師範が、別の時間帯には道衣を着替えて極真空手を教えているといったような状況が報告された。
海外の実地調査が進むにつれて明らかになる具体的な状況と、当社がマスターライセンスを受ける時点で知財法人から受けた説明との大きな食い違いは、まさに驚愕の二文字であった。
“全世界33カ国60年間一つの流派として・・・”はどこに行ったのか??
この事実に対して、知財法人からはあいまいな回答しか得られなかった。
全世界の各団体を少林寺拳法グループとして掌握できていないとなると、ライセンス事業が根幹から揺らいでしまう。
仮に、ビジネスとは無関係の立場から見たとしても、グループの統率ということではどうなのか。少林寺拳法は、グループ自体の存続が危ういのではないか。
私の不安は増していくのであった。
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2006年02月14日
おしらせ
拳士の父様及びすべてのお客様へ
お買いあげになった道衣が適正な方法で洗濯されて収縮したのであれば、現品を検査・調査の上、新品と交換をさせていただきます。乾燥機の使用など、どのような方法で洗濯されたかについては、科学的に判定できますので適正な対応を確約いたします。
当社が生産している道衣等は、すべて従来の道衣と同等の収縮率を持つ生地を使用しております。生地は、日本国内の第三者機関にて検査登録済みの製品です。
道衣を何十年も作って来た業者と比べて当社が見劣りするように感じる方がいらっしゃるのはやむを得ないかもしれません。オザキ社や前川社などの製品と使用感が異なることがご不満であるということなら率直なご意見として承りますが、これを理由に「明らかに品質が劣って」いるとすることには承伏しかねます。
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2006年02月18日
ブログをお読みの皆様
本ブログは、当社が少林寺拳法グループと関わって来た経緯を、多くの方々に、とりわけグループの一般拳士の方に知っていただく目的で始めました。
少林寺拳法グループは、公共性の強い団体でありながら重要な情報公開が内外に行われておりません。このままでは当社のお客様である拳士の皆さまは事実を知ることができず、当社に関しては大きな誤解を与えたままになってしまうため、私述として書きつづってまいりました。
ブログという形態をとったのは、皆さまのご意見を直接伝えてただき、疑問、疑念にお答えしたいと考えたからです。メールをいただくという手段もありましたが、それでは情報は当社しか得られませんし多くの方々に伝わりません。
ブログの扱いは極めてシンプルで、"送信"をクリックした瞬間の興奮と沈静のバランスがありのまま出るのもよきライブ感(本音)として読ませていただいております。そのため、不適当なコメントは削除するとしてはいるものの、一部の中傷的なコメントに対しても、これまで削除することはしませんでした。今後も削除はしない方針で行きたいとは思っております。
当社への批判・罵倒、大いにけっこうです。匿名とはいえ、コメントを下さる方、特に拳士の皆さまは人として責任を持って書き込みをしていただいているものと信じております。
裁判を有利に進めるためとか、本部離れをさせているとかのご意見をいただいているようですが、このブログが裁判で証拠となったり影響を与えたりすることはありません。もちろんグループの内紛を画策する意図などもなく、むしろ皆さまが真摯にグループのことをお考えになられていることを、私は当ブログを通じて改めて理解し、感嘆いたしました。
当社は一営利企業として、少林寺拳法知財保護法人との契約に基づいて、道衣の製造・販売を行って参りました。
その契約が一方的に破棄されたことで当社は損害を被っており、それに対する責任を少林寺グループに対して求めておりますが、拳士の皆さまと、皆さまが日々修行されておられる少林寺拳法に対して何かをする立場ではございません。
ただ、コンサルタントとしてグループに関わった実体験を持ち、個人的にも開祖の思想に感銘を受けた私には、コメントを下さる皆さんに共感する面が多々あるのも事実であります。
拳士の皆さんからすると私は部外者ですので、個人の心情を述べるのは適当ではないかもしれませんが、コンサルの立場に限定して「少林寺拳法という組織の運営手法」を見ても、巨額のお金が集まっているのにも関わらず、道場経営がいまだボランティアであることなど、疑問を抱かざるを得ない点が少なくありません。
組織運営においては、皆様の意見や少林寺拳法の思想が反映されていないなど色々と見直すべき点が多いように感じます。
また、こうしたブログでの皆さんの意見を拝読しても少林寺グループ内部での情報開示や意見交換などが余りにも不足していると改めて強く感じる次第であり、内外から人材を選りすぐり改革に関する討議を行うなど、現在の少林寺拳法が抱える問題に対する改善のための対策はいくらでもあるかと思われます。
営利・非営利にかかわらず、どのような組織も時代の変化に応じてダイナミックな対応を行っています。それによって60年に及ぶ少林寺拳法グループの歴史と開祖の思想が崩れていくものではないと私は確信しておりますし、むしろ開祖の思想に立ち返って共生の道を探るためにこそ新しい風が必要と考えます。
以上、当ブログについて私の思うところを述べさせていただきました。
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2006年03月14日
道衣・帯の開発と販売開始にあたって その3
社の組織改編など多忙が続き、更新が遅れてしまいました。申し訳ありません。2月13日更新分の続きを記述いたします。
新道衣の販売開始時、当社の担当者は、知財保護法人と連携してロット数などの調整に当たっていた。以前にも記述したように、道衣の製造工程は特殊な生地を生成するところから始めるため思いのほか効率が上がらず、販売の足の速さもあって、初回ロットはすぐに在庫がなくなりつつあり、品薄感が出て来ていた。
当初、知財保護法人は7つあった生産・販売業者をすべて一掃する構えであった。歴史のある老舗であり現在の販売代理店2社も含めた話である。
しかし当社としては、オザキ社のグループ内での人脈や調整能力、道衣製造のノウハウを高く評価していたため、保護策を知財に提案した。その結果、オザキ社、前川商店が販売代理店として本事業に加わることになった。
そんな折、初回ロットにおいて不良品があるとの声が上がった。当社の担当者はすぐに対応に乗り出し、クレームをいただいたお客様には深く謝罪した。一部の道院長のもとへは直接赴いて、ご意見をうかがうこともあった。そして、この取り組みのなかで、いくつかの疑問が浮上して来たのである。
初回ロットでのクレームは、汚れやホツレに対するものがほとんどであった。これはネーム刺繍の過程で、簡単に見つけられるはずのものである。
品質のチェックをメーカーと小売りのどちらで重点的に行うかは、扱う商品によっても異なるであろうが、このたびの道衣・帯に関しては、ネーム刺繍と同時に行うのが合理的であり、それが価格を抑えるためにも最良の方法であると当社は考えたのである(営利企業である当社としては利益確保のためであることも否定はしない)。
道衣の流通経路は、次の通りである。
海外生産工場→海外検品所→サイナップス日本倉庫
→オザキ社・前川商店(名入刺繍加工等)→拳士の皆様
当社が生産メーカーとして製造した道衣は、現地での検品を経て、国内の当社倉庫に納入される。
そこから直接、注文の数量に応じてオザキ社、前川商店の2代理店に卸される。海外向けの商品に関しては当社がネーム刺繍を行って発送しているが、国内卸をしているのはこの2社だけである。直販に近い形態といってよい。
販売代理店での検品は、義務として契約書にも記載されている。また刺繍の工程は1分や2分で済むものではないため、汚れやホツレがあったら作業の過程で自然に見つかるであろう。仕上げのチェックをするときも、一度はひろげて見るはずだ。
それ以前の問題として、普通の洋服店でもお客様に商品をお渡しする際にチェックをするのは商道徳の基本である。この件に関してもおなじだと当社は考えていた。
実は、当社に寄せられるクレームは、オザキ社から販売された商品に関するものが大多数なのであった。しかも、ほとんどが「メーカーに直接言ってくれ」とオザキ社から言われたお客様だった。不思議なことに、前川商店から販売した製品は、そのほとんどにおいてクレームがないことに、当社は後々になって気付くのである。
私が残念でならないのは、この件でお客様である拳士の皆さまにご迷惑をおかけしてしまったことである。コンビニやスーパーのような店舗でも、お客様から商品についてのクレームがあればきちんと対応しているはずである。メーカーや問屋に改善を求めるのは小売店が行えばいいことであって、それを放棄しお客様に押しつける態度には、プロ意識を疑わざるを得ない。
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2006年03月20日
道衣・帯の開発と販売開始にあたって その4
もう一つの疑問は、何人かの道院長との対話から浮上して来た。
道衣販売に於けるインセンティブが、全国の道院長の方々に通達されていないことがわかったのである。
このインセンティブとは、本事業の立案段階で知財法人へ当社より提案したもので、道衣の購入数に応じて価格の10%から15%を道院に支払うことが取り決められていた。
事業をスムーズに進めたいというビジネス上の理由があったことはもちろんだが、ボランティアで日々指導をされている道院を経済的に支援することで、少林寺拳法グループを活性化できると考えたからだ。
このたびの事業の立案段階でのヒアリングでは、各指導者たちは道衣購入費用の立替金が発生したり、営繕費用や教費の未納などの悩みを抱えていらっしゃるケースが多く、私が推察するに、相当な個人出費もあるものと思われた。「金のためにやってるんじゃない」と指導者の方々はおっしゃるのだろうが、だからといってそういう心意気に甘えていていいものだろうか? 特に、本部がそんな状態を放置しているのは、怠慢というしかない。
私は、今回のライセンスビジネスを“グループ内外”での循環経済基盤の整備を目指す第一歩と位置づけていた。グループとして指導者たちをサポートするとともに、次世代の指導者を育成するためのシステムづくりへの道筋が、本事業にて始められると考えていたのである。個人の善意に頼っていては、グループの運営がどこかで行き詰まるのは目に見えている。ビジネスの観点からも、組織の下支えは不可欠なのである。
インセンティブの形態としては、当初は、売上の集計後当社から各道院へ直接支払う方法を検討していた。しかし、支払は知財法人から行いたいとの意向があり、一度知財でインセンティブ分をとりまとめる仕組みにすることで落ち着いた。
10%から15%という数字は、販売ロスや運営にかかる費用が読み切れないので5%の幅を持たせて仮に定めたものであった。
以前にも記述したが、当社は3種類のライセンス費用を知財保護法人へ支払う契約をしていた。
@年間契約ラインセンス費用 数千万円(商品発売前この場合3月末日実行済)
A商品上代の5% 商品販売ロイヤルティ(四半期に一度、支払済)
Bインセンティブ商品上代10%から15%(道院への本件告知とインセンティブ支払とその証明を条件として)
@Aだけでもすでに支払済みの金額だけで億単位に近い。
インセンティブの件は、基本契約で合意に至らなかったため別途協議事項になっていたのだが、Bの支払いを要求する以上は実施されているものと私は思っていた。しかしながら、当社が道院へ支払い証明の開示を要求したのに対し、知財から寄せられたのは、「インセティブの知財より道院への支払明細等は一切公開しない」との回答であった。当社は重ねて開示を求めたが、押し問答のような交渉が続いた果てにライセンス契約解除の通知が届いたのであった。
知財が支払い明細を開示しない理由は、「財団の管轄なので手数料の扱いになると監査がOKしないから」とのことであった。知財は、当社が最初にインセンティブの提案をしたときも、おなじことを言って消極的な態度を見せていた。
たしかに、公益法人は利益を上げて構成員に分配することができないが、このインセンティブが指導者の皆さんの「金儲け」に当たらないことは明らかだ。また、道衣の取り扱いを知財で行っておきながら、道院のことはすべて財団の扱いとしてしまうのも素直に納得できる話ではない。
「支給証明・報告は遂行しない」ということは当社の要求である「道院・支部へのサポート」をしないといっているのと同じである。自腹を切って少林寺拳法を支えている道院へのサポートを、あえて回避するかのようなグループの方針付けには、本部ありきの中央集権型かつ傲慢な運営だと考えざるを得ない。
「多度津はもうよくて、力を入れるべきは東京であり、中心になると」との総裁の言葉が、今さらのように思い出される。
さらに、監査の都合上できないと回答し、合意した書面締結もないばかりか、十分な協議も行っていないにもかかわらず、インセティブ分の支払だけは当社に要求したのである。商取引からしても理解しがたい行為であり、真意を知りたいところである。
今年に入り、豊島区に東京本部ビルができ、知財も含めて移転している。
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