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 「自他共楽とは敵を倒すこと」

と開祖宗道臣は言ったという。どういう場面で誰を対象にどのような意図で述べられたものか、さっぱり分からない。ましてや私は開祖に会った事がない。がこれはなかなかインパクトのある言葉だ。書くべきか考えたが考え抜く思慮を私は持たなかったので、、、書いちまった。
 開祖は激情家であったという。よく言えば熱い男だ。開祖法話にはほとんど拳法の技術に関するものは無い。変わった拳法管長である。今後、この言葉が一人歩きしないことを願うばかりだ。て、このページの自体がすでにそれそのものなんだがw


●可否両存
 世にキリスト、ムハンマド、釈尊らを代表として、偉大な宗教家がたくさんいた。その言葉で何億という人々を振り返らせた。何億か何十億か、すごい人数を引き付けたものだ。しかしもう一つ大切な事実がある。すべての人を引き付けたわけではなかったということだ。
 仏教の教えを聞きながら帰依しなかったものも多い。聖書を知りながらアーメンと口にしなかった者も多い。百人来たら百人引付られたわけでは無いということだ。当たり前だがこれはとても大切な事実だ。かの超が付くほどの大宗教家ですらこれだ。
可否両者が必ず存在する。
 どんなに人気絶頂の芸人でも視聴率が100%ということは無いてことです。


●「誰でもできる少林寺」
 といったようなキーワードをよく耳にする。本当に「誰でもできる少林寺」なるものが現実にありえるのだろうか。万人すべてに合うものなどあるのだろうか。より多くの人に親しまれるものを──このような方向性を常に組織や指導陣が模索することは有意義だろう。しかし現実にこのようなものがありえるのだろうか。釈尊やイエスすらできなかったことが我々に可能だろうか。悲観しているのでは無い。現実を見たいのだ。
 時に言葉だけが先走り「少林寺はどんな人にでも受け入れらる」という風に過信されている場合も見受けられる。そしてその結果、本質をおざなりにしてはいないか。
【関連・参考】偶像崇拝
 自他共楽は「誰とでも仲良く」と言ったように使われる場合がたまにあるが、それは誤りではないか。「誰とでも」という情況には自己がない。
主体性がない。そんなものが自他共楽といえるだろうか。半ばは自己の幸せも考えろ!!
 鈴木大拙氏の言葉を借りよう。「誰とでも」には意思の自由を持っていない。自己はそれに対してまったくの無力であり、そのうえ外部からの力によって束縛されているではないか。

 例えばもし道院に見知らぬ酔っ払いでも入ってきたら、拳法をやってもらうということはないでしょう。酔っ払っていなくとも「そんなこと少林寺の道院でやらなくとも…」という見学者がくればどうか。そしてこれが道院の雰囲気を厭わない存在であったらどうか。方針に沿わない存在であればどうか。
 集団(population)にはそれぞれ独自の雰囲気がある。新たなる要素が加わり変化することは自体はむしろ好ましいことに思える。しかしどうしても合わない要素もある。でなくても急激な変化を人は恐れる。とするならば時として集団の空気、集団の和を保つためには除かねばならない要素があるということを見過ごしてはいけない。これは悲しく心苦しいことかもしれないが現実にあることだ。「敵を倒す」必要性がここに生まれる。

アレックス・カー
(東洋文化研究家)は「本当に愛しているなら、怒らなければならない。」「怒りが沸かないのは愛していないから。」と変わりゆく京都また日本文化を憂いだ。愛するには勇気がいる、これが力愛不二ではないのか。【関連・参考】天方と地位と力愛不二
 易しく言えば、嫌なものは嫌といえる勇気が自他共楽にこそ必要になるということだ。殴るべきときに殴れないのは勇気がないからだ。



 「自他共楽とは敵を倒すこと」。私はこの言葉がなんだか好きだ。物事なんぼ気合をいれてみたところで可否両存するという現実、そしてこれを直視する認識。一見異なるものが同時に存在する、つまり不二だ。そしてそこから生まれる自他共楽のあり方。これらを改めて考えさせてくれる。
 少林寺拳法を創始した開祖宗道臣らしい熱い言葉だなぁと改めて感心してしまう、会ったことないんだけどね。



追記
佐藤一斉の「容人三則」から二つを紹介します。
・物を容るるは美徳なり。然れども亦明暗あり
(訳)雅量があって人を容れるのは美徳である。しかしその場合善と悪があって、善を容れるのはよいが悪を容れるのはよくない。
・人の言は須らく容れて之を択ぶべし。拒む可からず。又惑う可からず。
(訳)他人の言うことは、一応聴き入れてから良し悪しを選択すべきである。はじめから断ってはいけない。またその言に惑ってはいけない(しっかりした自分の考えがなくてはいけない)。


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