投稿:ビスキュイ |
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「少林寺拳法こそ先手必勝」 少林寺拳法においては「守主攻従」という言葉がありますね。自分から徒に攻撃を仕掛けることはせず,相手から攻撃をされた場合であってもまず完全な守りを行い,而して後に反撃を行い身を守る。「後先必勝」の心意気。私としては非常に素敵に感じる教えです。 しかし同時に,世間には「先手必勝」という言葉もあります。「先んずれば人を制す」ともいいます。「兵は拙速を尊ぶ」なんて言い方もありますね。つまり「先に素早く仕掛ける方が有利!」ということですな。これも非常に納得のいく話です。では少林寺拳法でいうところの「守主攻従」と「先手必勝」は矛盾してしまうのでしょうか…? これに関しては,大学一年生の時に先輩がポロリと漏らした言葉で暫く私の中で引っかかっていた言葉があります。曰く、 その時は「ふ〜ん」と思っただけだったんですけど,後になってから「んん?」と思ったんですね。本当は先手必勝?じゃあ普段我々は「嘘」の練習してるの?っつーか,アナタは自分で信じてないこと指導してんですかい? まあ今の私だったらその場で確実に突っ込むところですが,当時はあまり細かく考えなかった(&体育会系の雰囲気に気圧された)ために結局突っ込みを入れられませんでしたが,確かに考えてみれば「先手必勝」の方が感覚的にはしっくりきますよね〜。昔からずっと言われてきてるわけだし。 ただ,あの頭のいい(&超現実主義者な)髭のお爺ちゃんが単なる「精神的な教え」という理由だけで技術体系を構成するとは思えんのですよね〜。そこで,私なりに考えた結果を以下に述べてみたいと思います。
ではどう捉えるのか?「先に具体的な行動に出ているかどうか」ではなく「先に行動の用意が出来ているか」という観点で考えてはどうかと思うのです。つまり「先手必勝」を「先に具体的な攻撃に出た方が勝つ」のではなく「先に行動の準備を整えた方が勝つ」という意味では捉えるわけですな。 そうするとですね…「まず完全に体勢を整えて守りを行い,而して後に反撃を行う」という少林寺拳法の守主攻従は「相手が攻撃を仕掛けるより先に我の体勢を整えておく」という意味で明らかに「先に行動の準備が出来ている」,つまり「先手を取っている」わけです。と言うか,先手を取っていなくちゃ「完全な守り」なんて出来ねーぞと。 つまり「“守主攻従”を謳う少林寺拳法は,他のどんな武道・格闘技よりも“先手(先に準備を整えておく)”をとっておかねばならん!」と。 じゃあ「後先」って何よ?という疑問が出ますわな。これは逆に「見た目に体を動かし始めるの“だけ”は相手より後」くらいに狭〜く捉えています。で,それ以外は全部こっちが先にやっておくと。どれくらい先にやっておくかと言うと…まあ常住坐臥全ての場面で準備しておく感じですか。理想的にはね。常に準備が整っていれば相手が先に手を出して来てもさほど慌てる必要はありません。前の日に学校に行く準備を全部してあれば,ちょっとくらい寝坊しちゃっても慌てず騒がず大丈夫!と同じ理屈。間合い・占位・目配り・意識・構え・etc…諸々において先手を取ってるが故に,具体的な動きの上ではちょっと後から動いても「後先必勝」,つまりは「先手必勝=後先必勝」。これが守主攻従ではないかな〜と思うわけです。(まあそもそも「後手必勝」ではなく「後“先”必勝」となってるんですから「先を取る」のは当たり前なんでしょうが…)【関連・参考】日常と非日常 「先に動いても守主攻従」 ただですね…如何に「先に準備を整えてある」とは言っても,実際の行動に出るのが遅すぎてはやはり先に行動を起こした方にやられてしまう場合もあるんですよね。例えば「攻守を決めた乱捕り稽古」を例にとるとすれば,攻者側は「守主攻従」という“言葉の印象”を利用した狡いやり方をすることが出来まして…どうやるかと言うと
これをやられると,攻守を決めた乱捕り稽古の守者はもの凄くやりにくいです。如何に守者が体勢を整えていたとしても,攻者は何の憂いもなく自分有利の体勢に持ち込んでから落ち着いて攻撃をすればよいわけですから。では守者は「いつ」動くべきなのか?先に動いちゃったら「守主攻従」にならないのでは?そういう疑問は当然出てきますね。 そこで前項の内容とは矛盾するようですが…「守者が先に動いても守主攻従」という場合もありえると。少林寺拳法的には。「はあ?何を寝ぼけたことを…」と思われるかもしれませんが,少林寺拳法の理屈の上ではこれが成り立っちゃうんですね,ホントに。ここで出てくるのが「先」の概念です。 「先」と言った場合,まず出てくるのが「後の先」「対の先」「先の先」という三つの先の概念ですね。
「攻守の誘い合い」 さて,以上のようなことを踏まえて「先制反撃あり」って設定で攻守決め乱捕りをやってみると,面白いことになります。攻者側が上手いと,「守者の先制反撃」を「引き出して」攻者が「反撃」を決めちゃうんですね。攻守を逆転させられちゃうんです。先制反撃ではなく先制攻撃を「させられ」てしまうわけですね。主導権を攻者に握られてしまった訳です。 これは一般には攻守決め乱捕りにおいては避けるべき状況として指導されていると思います。「守者の意識が“自分の攻撃を決める!”という方にばかり向いている。それでは攻者の攻撃に対して上手く反撃出来ない」と言われると思います。 しかし私は逆に,この状態こそが少林寺拳法の乱捕り稽古の醍醐味じゃないかな〜と思っているのです。攻守を固定する必要はないんです。「相手の攻撃を上手く引き出した方」を守者とすればいいと思うのです。互いに反撃を決めようと思っている状況で,如何にして相手に「こちらの想定内の」攻撃を出させるか?如何にして自分の方に守者の役割を引き寄せるか?誘い,攻め,待ち,動き,守り,あらゆる手を尽くして凌ぎ合い,逆に相手の誘いが「隙」になってしまっていればそれに乗じて一転して攻者として鋭い攻めを繰り出して攻め立てる。臨機応変縦横無尽。攻守が瞬間的に入れ替わりながら見えない攻防が繰り広げられる。ここの部分こそ絵にも文にも表せない乱捕り稽古の妙味じゃないかな〜と思うのです。実際上手な人相手だと,待ってるつもりが引き出され,待ち過ぎると攻め入られ,間合操作や運歩での出入りだけで翻弄されたりしちゃうものですが,そういう人はこういった状況作りや意識操作が上手い人だと思うんですよね〜。 で,この辺りの技術を身に付ける為には…意外に「真摯な法形演練」が重要だと思ったりするのです。ただし,あくまで「真摯な」法形稽古ね。単に手順をなぞるだけでは無理!後の先・対の先・先の先・間合い・意識・占位・変化etc…を徹底的に掘り下げながら落ち着いて法形を練り込んでいくのが効果的かと思います。乱捕り稽古だと落ち着いて練れないのよね〜。ただ,自分勝手な妄想に至らないためには乱捕り稽古での検証は必要だと思いますが。(色々武道書など読んでいると,形稽古の中で「検証」まで可能らしいのですが,私はまだそこまでは出来ないです。単純に乱捕り稽古楽しいし〜。) 以上のようなことで,私の中では「守主攻従を謳う少林寺拳法こそ何よりも先手必勝でなければならん!」ということが上手いこと収まりがついたのですが,どんなもんでしょうね? 【関連・参考】後先必勝だっ!! ov40「学生ルール」 |
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