トップ > コラム&ノート  > ミット打ちしませんか?


以下のようなメールをいただきましてー。
 実際に動く相手に攻撃する練習として、ミット打ちなどが有効と思いますが、ミットは持っている人がリードしてキックボクシングなどは練習しているようです。どういう風にリードすれば有効になるでしょうか

 ミットはサンドバックと違って人が持ってくれます。動いてくれますしタイミングも楽しめます。



●まずは定置、そして力いっぱいやる。
 まずは定置で叩きます。
 これは私の場合ですが、私ははじめからフォームの指導はしません。まずは力いっぱいです。拳士は頭がいい人が多いので上手にやろうとして萎縮し、せっかく物を叩いているのに全力でやらない・できないことが多くあります。
 力を出し切ることはとても大切な事です。これは絶対量のことではなく相対的なことです。自分の持っている力を出し切るというこですから、体が小さいとか女性だとかは関係ありません。物を10分も叩いていれば、それまで力いっぱいやっていたつもりだったが、それは
力いっぱい出せていなかったということに自ら気が付きます。力いっぱい出せることは単純に爽快ですし、何より自分に対する新たな発見になります。だから私はまず全力です。一生懸命に蹴るのと力を出すと言うのは同義ではありません。力を出し切れていない場合もたくさんあるのです。持てる力を出せるというのも技術なんです。
 その後のフォームは言いたいことがたくさんあっても一つ二つです。しゃべりすぎてはいけません。ミットに限ったことではありませんが、しゃべりぎるのは多くの場合指導者の自己満足となってしまうことが多く、、相手のことを考えていない、要点が分かっていないのです。その日に改善できる最重要ポイントにしぼって少なめに指摘します。ちゃんと力いっぱい蹴らせれば、人間は自らちゃんと蹴るフォームに近づいてきます。定置はこんなもんかなと。


 とりあえずミットの基本事項をここで列記。定置が基本になります。これだけでも1-3ヶ月やってもらって構いません。一般的なメニューは以下。
  • 中段廻蹴
  • 下段廻蹴
  • 上段廻蹴
  • 直蹴
  • 逆突
  • 順突
  • 順逆二連突(上・上)
  • 鈎突(上段も中段も)
  • 振突
    上段が多いかな。小さい振突も大きい振突も試してみる。開手の振突もやってみる。鈎突・振突のような曲線形系をやるときは、肩と肘の位置に注意する。両肩のラインより後方でヒットさせると肩悪くします。
 テーマがある人は当然その突蹴・連攻(コンビネーション)をやるとして、基本的なメニューは単純なもので良いと思います。その他いろいろ気になる諸事。
  • まずは逆蹴、逆突から。力を出してる感じが実感しやすいからです。この時に拳・前足底・脛などの当たる感触を養いましょう。
  • 最初は20-30本くらいずつ。もしくは時間区切りで30sとかでやってみましょう。キックとかフルコンではたぶん時間区切りが多いような気がしますが、少林寺拳法は回数が慣れてるからまぁいいでしょう。体力に余裕があればそれを数セット。
  • 振子突などでは左右どちらの突でも同じ位置を付きますが、ミットの時は左右の突手が交差するように突きましょう。持ち手の右手のミットを右で突き、左手のミットを左で突きます。
  • 超重要 ミットに限らず胴突も同様ですが、必ず叩く接触面よりも10cmから20cm後ろを狙って叩きます。表面を舐めるだけではいけません。威力とフォームに重大な差がありますので、かならず意識してください。少林寺拳法でも中段突は背骨を引っこ抜くように突くと指導される場合がありますが、同様の意味でしょう。演劇の世界では、座席前に向かって声を出すと小さい声になってしまう、後ろを意識して発声すればおのずと声が大きくなる。と言ったことがあるそうです。だけ気でも同様のことが起きます。これは打撃界では「スルー」、また古流系では「透し」と呼ばれます。
  • ミットの種類は様々です。まずはキックミットを購入するのがよいでしょう。慣れてくれば、ビッグミット・しゃもじミット・パンチングミット等があればさらに練習の幅が広がります。しかし荷物になるので全部は持ち歩けませんので良く考えて。
  • はじめはしんどくても、2-3ヶ月やれば体力が付いてくるのがわかります。同じ数やっても疲労具合が変わってきます。そん時は、回数を増やしてね。
  • 力いっぱいやることだから必ず左右やりましょう。やんないとたぶん体歪みます。
  • 有酸素系の運動として、数分間全力ではなくてやるというのもありです。ちゃんと一発一発を考えてやるならばフォーム改善に効果があります。しかしこれはある程度フォームが定まっている人向けで、初心はやんないほうがいいです。自分で改善点がわかんないからです。
  • 数をかけることが大切です。疲れてから続ける日も作りましょう。脱力したいい蹴が打てるのはこの披露した時です。たまには馬鹿になって叩き続けましょう。
  • 兎に角、ミットを持つ人、黙れ、べらべら喋るな。
  • 「いいよーいいよー」とか「弱い!!」とか叱咤激励、罵詈雑言はお任せします。叩いてる側にはかなりのモチベーアップ効果があります。




単撃のあとは連攻(コンビネーション)の練習もしましょう。
コンビネーションの例
  • 順突・逆突・鈎突  すべて上段
  • 順突・逆突・中段廻蹴
     最後の廻蹴は逆蹴だけでなく、身を引きながら行う順蹴もお奨めです。対角線コンビネーションになります。
  • 中段廻蹴・順突・逆突
     蹴からスタートもやりましょう。拳士は蹴ると攻撃が終了という場合が多すぎます。突から蹴、蹴から突、両方を。
  • 廻蹴・廻蹴
     左右の連蹴です。単純ですが、結構重要です。
  • 直突の四連
     地味ですがこれもかなりお奨め。疲れます。疲れたら背中で腕を出すことを意識しましょう。すると腰の切れに大きな効果がありますので柔法等にも関係する基礎作りに役立ちます。この感じは二連では味わえません。
 ネタ切れしたらとりあえず最後の攻撃にバリエーションを付けるようにしましょう。バリエーションが増える割には、稽古全体の統一感は損なわれません。単純に、上段・中段・下段を変えるだけでも雰囲気は変わります。




●コンビネーション2、最後を固定
 最初に最後を決めておきます。動画では「中段廻蹴」を最後の攻撃に設定しています。そして持ち手が2-3打指定します。指定は掛け声とミットの構えで同時に行います。打ち手はできるだけ素早く連攻を行います。最後の攻撃は自分の極め技を設定しておくのがいいでしょう。
最後を中段廻蹴で固定 コンビ・ダブル
持ち手の掛け声 打ち手
上・上 上段直突・上段直突・中段廻蹴
上・中 上段直突・中段直突・中段廻蹴
上・上・鈎 上段直突・上段直突・上段鈎突・中段廻蹴
蹴・蹴 中段廻蹴(右)・中段廻蹴(左)・中段廻蹴(右)
もちろんこれは例です。
掛け声等は都合よくやってください。
 中段廻蹴をタブルとかトリプルとかも体の使い型が分かりやすいのでおすすめです。同じこと動作を繰り返すこと身体が切れてきます。単発・ダブルとコンビネーション・ダブルの両方お奨めです。単発・ダブルは例えば下段廻蹴を素早く二回蹴ることです。単発なら三回蹴るトリプルも楽しい。コンビ・ダブルは同じコンビネーションを二回やります。これは動画参照。




移動
 ここでいう移動は、少林寺拳法で通常行われている体育館の端から端まで、といったものとは異なります。そういうのもあるんですけどそれはまた別の項にあります。ここの移動は定置の次にやって欲しい移動です。

 定置のあとは、一回叩くたびに持ち手が前後左右どここでもいいので一歩歩きます。左右にずれる、間合いが遠のく、間合いが詰まるという状況が起こります。つまり突蹴りする度に、攻者も一歩どちらかに動く必要が生まれます。持ち手は別に逃げているわけではないので、そんなに極端に大きく移動する必要はありません。意地悪でするのではありません。
 運歩を伴った蹴、運歩してから素早く蹴る練習は、
こちらも有効です。




●ランダムに
 他にもキックミットで、両手を下げ状態で持ち手が適当に運歩。攻者は素早く反応できるように常にいい間合いをキープ。持ち手がミットを持ち上げたら、「てぎるだけ早く」そこを攻撃する。
 運歩の中でどんだけ攻撃のチャンスが生まれたときに早く攻撃に移れるのかていう練習です。また蹴り技を出せる足運びの練習です。もちろん突でもやってね。

 早く動くためにはまず集中が必要です。そして動ける体勢も必要になります。さらにその体勢から力強く打ち出せるか。
 たまには2-3秒開けてみるのもいいですね。ちょっと長めの間を取ると雰囲気も変わってきます。単撃・連攻共におすすめの練習です。
こんな感じでだらだら歩き、 例えば下段ならこのように、 中段ならこのように。




●持ち手はたまに反撃を
 ミット全体に言えることですが、持ち手が人間なので数回に一回くらいは受けた後にヒョィとミットで相手を叩くようなことをしてあげてください。攻撃ばかりではなく防御も意識した運歩、入り方、残心をすることができますし、緊張感が上がります。
 右の動画では毎回出してますけど、参照してください。あまり打ちすぎると、攻撃自体が萎縮して弱わっちくなってしまうこともありますので初心相手には特に注意してください。
 初期の段階は、しっかり受ける必要はありません。そこまで求めるとかなり難度が高くうまくいきません。最初のうちは、攻撃に対して反応できていればよしです。軽いブロック程度でも良いと思います。またミットを叩いた後に、そこでひとつの動作が終わって立ち止まってしまう、ということでなければ可です。つまり叩いたらすぐさがる、残心のことです。
 またさらに、避けた後に突でも蹴でも一発返す練習もお奨めです。


以上、
  • 持ち手が移動する。
  • 持ち手が反撃する。
事を行えば実に緊張感のある。稽古が行えます。うまくいかない時は、どちらかをまた無しにしてもいいでしょう。慣れてきたら同時に行いましょう。ここら辺は限定乱捕りと同じ考え方です。二人でやっている利点を生かし、うまく相手を伸ばしてあげましょう。




●ミットの持ち手について
 ミットは二人でやることですので、その練習精度は持ち手の技量にも関係してきます。例えば、上記コンビネーション2の「持ち手が指示する」は最初は結構難しいかと思います。これは慣れなのでがんばってもらうしかないとして、他の注意点を書いておきます。
  1. 持ち手は突き手でもある
     ミットを持つ人はただ棒立ちに立っていてはいけません。例えば開足中段構のようにただ正対して立つのではなく、左右どちらかのレの字立ちでミットを持ちましょう。そして相手の突を受けるときは、受ける瞬間は自分がついているつもりで背中でミットを押しましょう。蹴を受けるときは前向きに力を出して踏ん張ることができる立ち方等できているか注意しましょう。
  2. 相手の動きを見る
     これは持ち手がアドバイスするという目的だけではなく、相対している相手から突蹴が飛んできている、これをどう対処するか等、思考を巡らせながらミットで受けます。こうして相手を良く見ること乱捕り稽古のイメージトレーニングや落ち着いた対処のもとになります。そもそも持ち手が上手いと叩いている方も気持よくヒットさせられるものです。持ち手がよりいい練習ができるようにとミットの微調整をしてあげる、して上げられるということは打ち手の攻撃が見えているということでもあります。

     このように相手が見えているからこそ上記、「持ち手が反撃する」がよりよいものになります。この「良い」とは相手にとっても自分にとっても「良い稽古」となります。




おまけ
●プッシュパンチとプッシュキック
 これは楽しいのでまたまたお奨めです。初心からやらせるべき内容です。フォームが一気に実用的に変わります。疲労しますけが、フォームの指導しなくても大まかな形は面白いことに勝手に身につきます。
 移動稽古ですが持ってる人が安々と下がりません。攻撃がゆるいと1cmも退がりません。これで体育館の端から端までやりましょう。突と直蹴・廻蹴でやるのがおすすめです。ミットに接触してから露骨に押しているだけでもいいです。極めとか冴えは全く必要ありません。
 大切なことは、

  1. 力いっぱい押させる。
  2. 全身で押させる。
ことです。蹴るときに手が下がってようが、奇声をあげてようがお構い無しです。そして持ってる側が半分罵声と半分応援してテンション高めにやる必要があります。
 少林寺拳士としてついついフォームとか何か細かいことをアドバイスしたくなりますが、そこはグッと我慢して、精神論で声掛けしてください。細かいことを意識すると、動きが小さくなり全力を出せなくなります。それではこの稽古法のポイントをはずしてしまいます。この稽古は、本人で突いてる感覚、蹴ってる感覚を全身で味わうためにするのです。ノイズを与えてはいけません。
 これ子供にも大変効果があります。数回数詞数ヶ月つづけるとしっかりしたフォームが身につきます。

 動画は学生さんです。二年生の黒帯さんですね。「2/3 前半」とか見ればわかりますが、やっぱりこれまで物をしっかり蹴ってこなかったわけです。「2/3 後半」でもこれでもちろん完璧とはいいませんがだいぶ物を蹴るフォームに近づきつつあります。この間、五分です。やっぱり蹴のフォームは蹴ることでしか身につかないと思います。この必然性を稽古の中に混ぜ行くのが指導者の腕の見せ所でしょう。




●ミット買おうぜ!!
 画像はイサミさんから借用。みんな、イサミを使ってね!!私は新宿と横浜の常連です。
キックミット
 これがとりあえずミットの標準でしょう。グレードにだいぶ幅がありますので、あまり安いものを買うと少年部向きで柔らかすぎる場合があります。一つで3000円以上のものを最低でも欲しいところです。基本的には二つセットで購入・使用します。

 とりあえず突蹴両方いろいろ使え、両手で持つので持ち手が反撃も行いやすい。突蹴両方に使いやすいので、突蹴両方が入ったコンビネーション練習にはこれを。
 持ち運ぶときは、マジックテープが付いたバンドなどで結束します。ばらけると面倒です。
パンチングミット
 通称、パチパチパンチ。これ安めの物でも厚みさえあれば結構使えます。小回りが聞くので、直突、鈎突、振突等、横鈎突、上鈎突等のコンビネーションの練習に使いやすい。また腹に構えれば、蹴も受けられないことはありませんが、振蹴はちょっとしんどい。前足低での廻蹴なら多少はいけます。

 使用の際は、軍手をつけて使うと臭くなりません。
 
ビッグミット
 これも価格と大きさにけっこう幅があります。私は持ち運びやすい一番小さいビッグミットを使っています。5000円くらい。

これは直蹴も受けやすいし、ショウリンジャーにはうれしい前足底での廻蹴練習にも使いやすい。肘膝も可。蹴全般の蹴った感触もキックミットよりもいい、気がする。キックミットでも不便はありませんがー。もちろんキックミットはコンビネーション練習は苦手です。

 蹴を受けるときの持ち方の一例として、縦の取っ手に左右それぞれ腕を通して、上のとっても握る、等がお奨めです。
しゃもじミット
 正式名称はいろいろあって不明です。主に振り抜く蹴の練習に使います。軽いので変化にとんだコンビネーションが楽しめます。蹴った感触はほかのミットに比べて軽いので、瞬間的にインパクトを高める必要があり、これはいい稽古になります。
 安いので一つくらい持っていると良いかと思います。
 こんな具合で、ミットにも種類があります。その日のメニューやメンツによって私はミットは換装します。基本的には、キックミットだけか、パチパチパンチとビッグミットのセット、のどちらかで持ち歩いてます。
 ミットには靴紐のように紐で末端を綴じているものと、ファスナーで閉じているものがありますが、小さなファスナーのものは叩いていると開いてきたり、ファスナーが外れてしまう場合もありますので、注意が必要です。大きなファスナーは基本的に大丈夫ですが、金属が付いていることを嫌う人もたまにいます。
 ミットは消耗品なのでへたったたら買い替えです。よい物は勿体無いので、中に新聞紙・ボロ布などを摘めて使い続ける人もいます。結構いけますのでお試しあれ。安いミットは買い換えましょう。





  • ビスさんたちは、いつもミットを叩いています。いろいろやってます。振突でも返蹴でも、段蹴でも手刀打でもとにかくいろんな種類をやっています。何時間も叩き続けていることもあります、背中吊るまで。いろいろやりましょう。
  • とはいえ、ミットは変わった事やるという面よりも日常的に叩くことが大切です。練習前の心拍をあげる為だけにでもいいので毎回やりましょう。練習が変わりますよ。
  • 若いころにミットを散々叩いてきた人は、次は楽に蹴る練習をしましょう。例えば五割の力で蹴って八割の威力を出す、等です。歩くように蹴り、汗もかかないけどほどほどに威力を出せる、こういう稽古もあります。ただし若い人が早々にこれをしてはいけません。これは全力で蹴り続けた後の練習です。



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