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2009/11/22のニュース
 沖縄県うるま市の市立中学2年の米盛星斗さん(14)が集団暴行を受けて死亡したとされる事件で、 傷害致死の疑いで逮捕、補導された少年たちが、県警の調べに、暴行した理由について「態度が生意気だった」という内容の供述をしたことが22日、わかった。      
   県警によると、逮捕、補導された少年8人は動機を問われ、米盛さんの日頃の言動を挙げて、「生意気だった」「調子に乗っていた」などと話しているという。      
   米盛さんは学校帰りに少年たちに呼び出されたとみられ、病院に運ばれた時は制服姿だったという。米盛さんは暴行を受けても抵抗しなかったといい、顔を除く全身を殴られたり、けられたりした。現場近く からは鉄パイプが見つかっており、県警は関連を調べている。      
   関係者によると、米盛さんは事件が起きる以前も、今回逮捕、補導された少年を含むグループから暴行を受けたとほのめかしていたという。友人には「空手を習っているから、殴り返さない」と話したという。校長によると、米盛さんは少年グループの数人と友人関係だったが、最近は距離を置き始めていたという。県警は、こうした態度に腹を立てた少年たちが、暴行をエスカレートさせていった疑いがあるとみている。日常的に暴力を加えていた可能性も視野に調べる。  
   県警は逮捕した少年5人を22日午後、那覇地検沖縄支部に送検した。  
  http://www.asahi.com/national/update/1123/SEB200911220062.html  (リンク切れてます)

私なら「殴り返せばいいのに」と思いますけども。
  • いやしくも武芸を修める者は、濫りに用いるべきではない。
という考えは同意であります。でも子供には「濫りに」が判断つかなかったのかもしれませんね。 この少年の師匠はこれで満足なんでしょうか。習わせていたご両親もこの結果に満足なんでしょうか。きっと満足とは言えないでしょう。これは残念な事件です。
 ネットでは、勝海舟が祭り上げられて「海舟は生涯、刀を抜かなかった」とか意気揚々と書く人がいるけど、基本的に彼は免許皆伝受けてるような腕前だし、それでも刀傷は20以上あって後年寒いと傷んだと聴きます。海舟はすばらしいけど、真似できるところとできんところがあります。美談にはそれなりに理由がある。それを美談だけで終わらせるのはまずい。

●殴ってしまうと喧嘩に買っても、法律で負ける
 あと、拳士からぼちぼち聞く「殴ってしまうと喧嘩に買っても、法律で負ける」というのも鵜呑みにはできません。確かに法律で負けてしまっては社会生活がどうにもなりません。かと言うて生き残って法律云々できるならそれも必要ですが、ここでやんなきゃ殺されるという状況を想定して稽古をする、そして擬なりにも覚悟をしておくと言うことは決して無駄なこととは言えないと思うのです。法律に関する知識は暴力沙汰に限らず社会生活では大変有効な護身術になります。でも、少なくとも差し迫った暴力から法律は我々を護ってはくれません。「法律で負ける」から必要ないと思考停止することは、ちょっとどうなのと思います。
 ちょっと余談ですが、古い拳士ですけども、
 昔、ヤクザと仕事のことで揉めたことがあった。その時は本当にいつ刺されるか分からないという状況だった。だから自分もいつも刃物を携帯していた。自分は決して悪いことをしたわけではないのに、それでも刺されて殺されるくらいなら、ただ死ぬなんてのは嫌だ。せめて相手を刺し違えるつもりだった。今になって思えば、あの時の自分は常にひどい形相をしていたと思う。またあんな風にはなりたくはない。
 この話は今回の話とは関係ないけど、差し迫った暴力に対して人はその恐怖をそのまま受け入れられるものなのでしょうか。また別の老拳士は教えてくれました。
何故拳法を学ぶのか、それは泣いて帰りたくないからだ。
街中で突然因縁つけられて、殴られて蹴られて、お金取られるようなことがある。悔しい、そんな悔しい思いはしたくない。またさせたくない。
悔しい悔しいと言うて泣いて帰るような惨めな思いは誰だってしたくは無いだろう。泣いて帰るだけじゃない、もしかしたら犯されるかもしれない、殺されて帰るかもしれないんだ。そうなりたくないから拳法やるんや。
 和気藹々とやる稽古もいいけど、ちゃんと泣いて帰らさ無い指導もしてあげてくださいよ。世界の平和と福祉もいいけども、まずは自分が惨めな思いしたくない、あたりまえやろっ!!

 まま、この平和な日本では絵空事なのかもしれません。しかし武道の格言に「稽古は実戦のように、実戦は稽古のように」というのがあります。指導のことばかりではなく、「いやしくも武芸を修める者」はたまには、自分なら指しせっまた暴力に対してどうするだろうかと考えておくのもよいかも思うのです。皆さんはどうお考えになりますか。
 自分ならどうするのか。自分ならどのように指導するのか。我々の稽古とは覚悟とは、護身錬胆とは。



【参考関連】危うきに近寄らず

お勉強


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